8月1日に新しい仮想通貨が発行され、話題を呼んでいる。以前から情報を追っている方も、ウォレットを見て気づいた方もいるだろうが、今回はその新しい通貨である「ビットコインキャッシュ(以下、BCH)」を簡単に紹介する。
ビットコインキャッシュとは、2017年8月1日にビットコイン(以下、BTC)がハードフォークされ、誕生した新しい通貨だ。ビットコインはもともと、取引量が増えてきたことによる取引スピードの低下など、スケーラビリティが問題となっており、今回のコインはそうした問題を解決するために一部のビットコインマイナーにより生み出された。
そうした経緯があるため、ビットコインキャッシュは「ビットコイン」という名称が使われており、機能面で従来のビットコインを踏襲する部分も多いが、全く新しい通貨と認識すべきだろう。
BCHの基本的な機能はBTCに則して作られているが、大きく3点でBTCとの相違点がある。
詳細な説明は本稿では割愛するが、簡単に言えば、これまでのBTCが抱えていた取引速度が低下するリスクを無くし、セキュリティの向上でより安全な取引を実現する、ということだ。まさに従来のスケーラビリティ問題を解決するためのコインとなる。
ところが、現実は思い通りにいかず、8月3日現在、BCHはBTCよりも“取引速度の遅い”コインとして低調な滑り出しとなってしまった。その理由として「マイナーの数」と「マイニング報酬」が関係している。
ビットコインの基礎技術であるブロックチェーンが分散台帳と呼ばれるのは、内部の全ての取引を複数のマイナーが検証し承認する仕組みとなっているためで、これによりブロックチェーンは改ざんやネットワーク攻撃から守られてきた。つまり、マイナーはブロックチェーン技術の核とも言える存在なのである。
ではBCHのマイナーは誰か。実は、BTCと同一マイナーが承認している。しかも今回のハードフォークは、従来取沙汰されていたハードフォークの方法とは違い、今までのビットコインをコピーするような形式であったため、マイナー達の混乱も招いているのか、多くのマイナーはBCHのマイニングに参加していないようだ。
以下、twitterに投稿され、話題となった分かりやすい図を紹介する。
$crypto $btc #bitcoin #fork #pastastick $eth $bch $bcc
— harand (@Andsvik) 2017年8月1日
Y'all see the difference?#fakebtc pic.twitter.com/0cCbpqLQUf
左が従来のハードフォーク、右が今回のハードフォーク
加えて、問題となるのが「マイニング報酬」である。
マイニング報酬とは、マイナーがブロックチェーンの取引を承認した際にもらえる手数料と思ってもらえればよい。報酬価格は仮想通貨によって違うが、BTCとBCHを比べると圧倒的にBCHの方が安い。同じ労力を割くのであれば、多くのマイナーはBTCを選択するのである。
こうして、BCHは大きな構想を描いて誕生したものの、滑り出しで大きくつまづくことになった。
足下の各取引所の対応だが、多くの取引所では混乱を避ける目的もあり、結局BTCの保有者に同単位のBCHを配賦する方策をとったようだ。
BCHの価格は、一時期はBTCの30%程度であり、これにより一部のBTCホルダーは突然数十万~数百万円相当の仮想通貨を受け取ったわけだが、現在では上記のBCHの取引不全も少しずつ解消され、売り越された結果BTC比10%程度の価格に落ち着いている。
今後の動向予想としては、BTC側のマイナーとBCH側のマイナーの対話に注目されたい。前述の通り、BCHの大きな問題は実効性の部分であり、BTC側のマイナーとの和解によりこの点が解消され、マイニング報酬が向上すれば、当初想定したBTCに比べた利点が再評価される可能性もある。
一方で、今回のようなやや強引なフォークが繰り返されれば、仮想通貨の価値そのものが信頼されなくなる事態に陥る危険性もある。
すべては市場参加者やマイナーなど仮想通貨に関わるあらゆる人々の行動次第だが、私としては、もう少しの間、市場を信じてBCHを持ち続けてみたいと思う。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス