ICOという言葉をご存じだろうか。仮想通貨に触れている読者であれば耳にしたことがあるかもしれない。これは、Initial Coin Offeringの略で、とあるサービスの提供を目指す企業や組織が、独自の「トークン」を発行し、サービスの理念に共感したユーザーに「ビットコイン」や「イーサリアム」などの仮想通貨で購入してもらうことで資金を調達する手法だ。
トークンは、その組織が資金調達によって実現するサービス内で利用できる通貨として扱うケースが多いほか、トークンを仮想通貨取引所に上場させることで、仮想通貨として流通するようになる。いわば、トークンの状態は上場前の未公開株式であり、上場によって株式が流通することで価値を持つようになるのと同じと言える。
ICOは、新しい資金調達手段としてここ1年で急速に普及し、ブロックチェーン系のスタートアップでは、ベンチャーキャピタル(VC)からの調達額を上回ったという。しかし、ICOが活発なのはシンガポール(現在ICO禁止の流れに動きつつある)やスイスのツーク州、香港などの話であり、日本ではICOを活用したプロジェクトはあまり見られない。大きな動きとしては、テックビューロがICO向けプラットフォーム「COMSA」を発表したぐらいだ。
こうしたなか、ICOを使った資金調達を計画する国内のスタートアップが登場した。それが、ソーシャルメディアプラットフォーム「ALIS」だ。
ALISは、ブロックチェーンを活用し、ページビュー(PV)以外でのメディアのマネタイズを目指すソーシャルメディアプラットフォームである。ウェブメディアにおける重要なKPIの一つであるPVだが、メディアに掲載される広告の単価を左右することから、DeNAのWELQ問題に代表されるように、質の低い記事を大量に作成し、SEO対策によって検索結果の上位に引き上げることでPVを稼ぐ手法が蔓延するなど、PV偏重による“歪み”が生まれている。ALISはこの問題の解決策になるという。
執筆者はALISのプラットフォーム上で記事を公開し、その記事の質が高いものだとコミュニティ内で評価されると、執筆者とその記事をいち早く見つけたユーザーに対し、独自のトークン「ALIS」を発行する。PVベースではなく、コミュニティが質が高いと判断した記事に対して報酬を与えることができるシステムだ。ブログプラットフォームの「Medium」に非中央集権型の報酬システムが付与されたものと考えるとイメージが掴みやすいかもしれない。
コアメンバーは、リクルートで事業開発を手がけてきた安昌浩氏をファウンダーに、同グループの水澤貴氏、エンジニアの石井壮太氏を含めた3人。安氏は、「ユーザーが質の低いコンテンツを消費させられていることに気づき始めている」と、日本のウェブメディアにおける問題点を指摘する。 「ウェブ広告も見られなくなっており、DMPや機械学習を活用して広告に立脚したビジネスモデルを維持しようとしているものの限界がある。広告収入に頼る以上、メディアの記事も企業の論理に立つことが多くなる。広告から脱却したメディアを作れないかという危機感があった」とALIS提供の背景を語る。
「優秀なライターが1記事あたり数百円など、クラウドソーシングサービスで買いたたかれている。企業とクリエイターが分離してしまい、企業間では膨大な金銭のやり取りがあっても、それがクリエイターにまで降りてこない。作り上げたものが正当に評価される仕組みを小さな経済圏で実現する」のがALISのコンセプトだという。ALISにはコンテンツ保護の機能も実装し、盗用した記事は評価しない。ユーザからの不正報告や、ユーザーの重複率を検知するロジックの活用、いいね!したユーザーが同一ネットワーク上に多数存在する場合などに、盗用や不正を検知する。
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