logo

朝日新聞がテレビ局とベンチャーファンド設立--メディアならではの強みを生かす - (page 2)

藤井涼 (編集部) 井口裕右2017年08月07日 08時00分
  • 一覧
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

野澤氏:ファンドの出資約束金に対する割合では、日本と海外は半々と考えています。日本ではビジネスモデルのポテンシャルがある程度見えてきたアーリーステージを中心に投資していきたいと考えていますが、海外ではテクノロジベンチャーのシード案件に投資したいと考えています。海外では比較的、ベンチャー企業の早い段階から支援に参加していきますが、日本ではある程度ビジネスモデルが固まり実績が生まれてきたベンチャー企業に投資していく予定です。

――日本の新聞社(を中心としたファンド)が海外のベンチャーに出資することに対して、シリコンバレーではどのような反応がありますか。

野澤氏:実は、メディアグループがベンチャー投資するのは海外では珍しいことではなく、私たちがシリコンバレーでベンチャーを支援することに特に驚きはありません。たとえば、米国ではニューヨークタイムズがアクセラレータプログラムを展開していますし、英国のブルームバーグも「Bloomberg Beta」というCVCを作っています。

 Bloomberg Betaはブルームバーグ出身者と投資業界出身者の混成チームなのですが、Bloombergの新しいビジネスを作るというコンセプトで、メディア・情報産業領域だけでなく幅広くベンチャー投資をしています。また、ユニバーサルスタジオなどを傘下に置くComcastや雑誌ELLEなどを展開するHearstもCVCを組織して、コンテンツ制作、デリバリー技術、データ分析などさまざまな領域に投資しています。日本よりもアグレッシブに進めていますね。

多様化する情報ニーズに応える未来のサービスを生み出したい

――今後の取り組みに向けた抱負やベンチャー企業へのメッセージをお願いします。

白石氏: 私はこれまで、朝日新聞販売店の支援などをする販売促進の領域に携わってきており、ベンチャー支援では組織の在り方や人材マネジメントについての助言などをしてきました。スタートアップ企業はどうしても技術やサービスに視点が集中してしまい、人材のハンドリングやモチベーションの保ち方、インセンティブの付け方などは見落としがちになるので、これまでの経験を生かした支援や助言ができればと考えています。ファンドによる支援と従来から行っているアクセラレータプログラムによる支援を両輪にしてベンチャー支援を拡充したいですね。誰も考えないような面白いアイデアを持つベンチャー企業にどんどん会っていきたいと思います。


「創業期のベンチャー企業には組織作りも大切」と白石氏

山田氏:私がデジタルビジネス本部に所属していた2010年頃からスマートフォンが急激に普及してきて、私自身もiPhone 4を購入するためにApple Storeに並んだ経験があるのですが、ユーザーとしてスマートフォンの可能性に期待していた一方で、サービスを生み出す立場としてスマートフォンの盛り上がりにワンテンポ出遅れてしまったのは事実なのではないかと思います。外部環境の変化が目まぐるしい時には、新しい技術やサービスが急激に拡大しますが、その中で新しい価値を生み出していくのはフットワークが軽いベンチャー企業です。今回のファンドでそうしたベンチャー企業に投資をすることを通じて、私たち自身もこれからの世の中に合わせた変革をどんどん生み出していければと考えています。

 私たちはこれまで“マスメディア”と呼ばれる多くの方々に、ジェネラルな情報を届けるビジネスを展開してきましたが、時代の変化やライフスタイルの変化によって情報に対するニーズは多様化・複雑化しています。そうしたニーズの変化を素早く捉えて、機敏に期待に応えるという命題に対して、我々マスメディアでは難しい面もあるのは事実。私たちがすぐに気づくことができない情報ニーズの変化や、情報消費スタイルの変化を捉えて、適切な形でデリバリーできるようなメディアビジネスを支援していければと考えています。コンテンツを作るノウハウではなく、コンテンツを時代のニーズに応える形で届ける将来のデリバリー技術やアイデアを支援していきたいですね。

佐野氏:既存の新聞事業が減少傾向であることは、朝日新聞のみならず新聞業界全体の今後も避けられない大きな課題だと考えています。今回、新会社を設立してさまざまな新規事業にトライする中で、ファンドの財務リターンそのものも念頭に置きながら、これからの新聞社にとっての新たな収益モデルの創出にチャレンジしていきたいと思います。


「新たな収益モデル創出にチャレンジしたい」と佐野氏

野澤氏:シリコンバレーにいるエンジニアはみんな天才的な能力を持っていると思われがちですが、日本のエンジニアリングはシリコンバレーと比較しても非常に優秀だと思いますし、言葉の壁が関係ないようなサービスやテクノロジであれば、日本のベンチャー企業は国内で小さく始めるのではなく、最初からグローバルを念頭に置いてビジネスを考えていいのではないかと思います。

 シリコンバレーに3年もいると、なかなか日本のベンチャー企業をめぐる状況が聞こえてきませんが、それは裏を返すと日本のベンチャー企業がそれだけ海を渡っていないということ。中国、韓国、インド、アフリカなどのベンチャー企業が台頭しているのに対して、日本のプレゼンスはまだまだだと思います。商習慣の違いや投資プロセスの違いなどもあり、決して簡単ではありませんが、日本のベンチャー企業にはどんどん海外に挑戦して欲しいですね。私たちもファンドを通じて多くの機会を提供できればと思います。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]