画像とURLでコンテンツを“直販”できるシステム「Pulit」--民放や出版社が導入へ

 電子透かし技術により、動画などのコンテンツを直販できるシステム「Pulit」を開発するPulitは6月21日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と投資会社の各1社から、総額1億円の資金を調達したことを発表した。同社は2016年8月末に5000万円の資金を調達しており、累計調達額は1億5000万円となる。

 Pulitは、同社が独自開発した電子透かし技術を利用して、コンテンツホルダーとユーザーを直接つなぐシステム。従来のようにアプリをインストールしたり、サービスに入会したりしなくてもコンテンツを楽しめるため、テレビ局などのコンテンツホルダーは、たとえば「Netflix」や「Hulu」などの既存コンテンツプラットフォームに依存せずに、国内外のユーザーにコンテンツを直接届けられるようになるという。12月から提供を開始する予定。

「Pulit」のイメージ
「Pulit」のイメージ

 利用の流れはこうだ。コンテンツホルダーは、Pulitが提供する管理ページに自社が制作したドラマや映画などのコンテンツを登録して、2MバイトほどのMDI画像(Multicast Distribution Image)とダイレクトアクセスURLに変換。そのURLを、FacebookやTwitterなどのSNSで拡散する。

 ユーザーは、コンテンツホルダーが拡散したURLをクリックするだけで、動画プラットフォームサービスなどに遷移することなく、直接そのコンテンツを専用のビューワーで視聴できる。また、気になるコンテンツは自身のスマートフォン内にMDI画像として保存。画像のメニュー項目から動画の再生を選ぶだけで、その画像に紐づく動画にアクセスして視聴できる。MDI画像をSNSやLINEなどで友人に共有することも可能だという。

コンテンツホルダーとユーザーの利用の流れ
コンテンツホルダーとユーザーの利用の流れ

 Pulitの代表取締役であるK.W Lee氏は、約9年にわたり韓国のサムスンなどで研究開発に携わっていた人物。さまざまなコンテンツプラットフォームが乱立する中、コンテンツを横断的に提供できないかと考え、起業。独自の電子透かし技術を3年かけて開発した。QRコードやバーコードなどは、SNSに投稿する際にJPEG圧縮などの画質劣化により、95%以上のデータが閲覧できなくなるが、MDI画像では100%の認識率を誇るとLee氏は話す。同社ではこの技術の特許を本出願しており、9月に公開される予定だという。

 Lee氏は、既存のコンテンツプラットフォームなどを経由して動画などを配信するには、アプリのダウンロードや入会が必要なため、ユーザーにコンテンツを届けるまでの敷居が高いほか、プラットフォーム利用料なども発生してしまうと指摘。Pulitであれば、コンテンツホルダーが直接SNSのフォロワーなどにコンテンツを届けられるためクリック率を上げられるほか、費用も従量課金のサーバ利用料のみのため低コストで済むと説明する。

Pulit代表取締役のK.W Lee氏
Pulit代表取締役のK.W Lee氏

 同社では約半年間にわたり、日本の民放放送局6社、大手出版社4社、アニメ制作会社2社、広告関連会社1社とともに、プロトタイプによる社内テストを実施。その結果、参加企業からは高評価を得られたことから、今後も12月のサービス開始に向けて、国内すべての放送関係者、出版関係者に提案したいとしている。

 「画像とURLさえあれば、世界のどこにでもコンテンツを流通できるネットワークを作りたい。そして、コンテンツホルダーがよりコンテンツ制作に集中できる環境を作りたい。Pulitによって本質的に海賊版の問題も解決できると思っている」(Lee氏)。

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