ペイントを支持する声が突如として湧き上がったのは、Microsoftとしても予想外だっただろう。おそらくは、そもそもペイントを廃止することなど予定していなかったからだ。
だが、ユーザーにしてみれば、そんなことは知るよしもない。「非推奨」という言葉が出てくれば、次かその次のリリースで「廃止」となるのが相場だからだ。Microsoftにとっては、さほど重大ではないと考える変更であっても、告知や文書化の際にはもっと慎重になるべきだという良い教訓になっただろう。
発表方法の問題に関しては、ほかにも例がある。「Windows Insider」プログラムの「Fastリング」テスターに向けて新しい「Skip Ahead」オプションが告知されたときのことだ。
クリップボードを使用できない、「スタート」メニューで検索語を入力できない、あるいは「Edge」エンジンのバグが原因で「Tweetium」のツールバーが表示されないビルドを使っていて、速度に不満がある場合には、Fall Creatorsの後のアップデートにビルドを切り替えることができる。このビルドでは、メールやフォトなどのアプリの新しいバージョンを試用できるようになる。
このことは、詳細なブログ記事では公開されず「Feedback Hub」でしか告知されなかったため、Windows 10のPC上でなければ、詳細を読むことはできなかった。例えば、「iPhone」上では読めない。
Windowsチームは、誰にでも告知を読んでもらえるように、新しいウェブサイトの公開を予定している、とTwitter上では言及していた。だが、そのサイトが準備される時期や形態も、現在の「Windows Blogs」から変更される理由も、明らかにされていない。このような「内輪の会話」は、Windowsチームにとって問題の種にしかならないだろう。
必要以上に確約してしまい、後から機能を取り下げることになるのを心配するのも無理からぬことだ。だが、Windowsのどのバージョンに導入されるのか名言しないまま大枠のデモで機能を紹介したために、次のアップデートでは導入されるのだろうと思わせてしまうほうが、もっと面倒なことになる。
変更は避けようがない。だが、透明性をもって情報を開示し、その過程で予測の精度を上げていけば、信頼は確立される。
詳しく説明しておいて後から変更するほうが、説明不足のままユーザーを驚かせたり失望させたりするより、批判は少なくて済むものだ。
ペイントが関心を集めている理由のひとつは、懐かしさだ。Microsoftは間違いを犯していると、例によって決めつけたい気持ちもあるだろう。また、「Windows as a Service」とは、「Windowsが絶えず変化し、変化はときに何かを取り去る」という意味であることに対して、単純に納得していないという面もある。
だが、おそらく何よりも大きいのは、使い方がわかっていて便利な機能がいくつかある簡単な基本のソフトウェアは役に立つし、特にいつでも手元にあって使えることが確かであれば実に有益だという事実である。
確かに、ペイントの機能のすべて、またはそのほとんどを実行できるツールはいくつも存在する。「ペイント3D」で実行できるのは3Dだけではないこと、「メニュー」アイコンが実際には「ファイル」メニューを表していること、「図形」が若者向け風の「ステッカー」ラベルの真下に隠れていること、図形の配置を固定するにはスタンプのフローティングアイコンを使わなければならないこと、などをいったん把握すれば、ペイントでできることのほとんどを、すぐに実行できる。
だが、変化には慣れが必要だ。それに加えて、Windowsユーザーはおしなべて機能向上を望んでいるものだが、必ずしもそれが変わることは望んでいない。20年近く同じOSにいつまでもしがみついているユーザーがいることが、その何よりの証拠だ。
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