――民泊新法がついに成立しましたが、今の気持ちを聞かせてください。年間180日という営業日数の上限に不満を持っているホストもいるようです。
新法は、非常に分かりやすくて現実的な内容になっていると思います。ただ、これで終わったわけではありません。今後、条例に落とし込む段階で、日本らしい形で、また地域ごとに地域らしい形でルールが作られていくと思いますので、我々としても引き続き(Airbnbの)データ提供などをさせていただきながらお手伝いをしたいですね。
(180日間の上限については)まずは日本らしい普及の仕方の第一歩なのだと思います。現状ですとホストが年間に部屋を貸し出している日数は平均90日となっていますが、 たとえば定期的に3カ月ほど家を空ける人の部屋を有効活用することもできますし、価格設定によっては、1年間貸し出した場合と同じ利益を短期間で得られることもあります。また、物件を持っている不動産などもありますので、180日以上なら旅館業の許可を取っていただく。非常に分かりやすいルールかと思います。
――今後、Airbnbにも新法に違反していないかを確認するスキームなどを取り入れるのでしょうか。
まだ新法の詳細が出ていないので、どういう届け出のシステムになるのかは、観光庁など関係各所からのアドバイスをお待ちしている状態です。ただ、すでに海外のAirbnbではパススルー方式を導入しています。これは、Airbnbへの登録時に(ホストに許可を得た上で)我々から基本的な情報を自治体に提供することで、ホストの届け出が簡単になるというものです。こういったご協力はできますので、ルール作りには全面的にお手伝いしたいですね。
――民泊新法によって、どのようなホストが増えると思いますか。
日本には約840万戸の空き家があると言われていますので、空き家問題の解決や地方創生を実現するためにも、空き家を抱えている個人や不動産、一般企業などによる活用が進むと思います。そして、我々としては空き家を泊まれるようにするだけでなく、新しい旅のスタイルを啓蒙していく。日本には他国に負けないコンテンツや文化があり、ユニークなホストのコミュニティもあります。あとは、それをどう生かしていくかだと思いますので、企業や地元の方と一緒に考えたいですね。
――安全に泊まれるように修繕する必要がある空き家も多いかと思います。その点もAirbnbはサポートしていくのでしょうか。
おっしゃる通りです。修繕しないと使えない空き家は、使い道のない財産ですよね。たとえば、それをファイナンシャルプロダクトと考えて、空き家の持ち主にお金を貸して修繕をして、10年間は(Airbnbでの)利益をローンとして返して、10年後には使える資産として戻ってくるというパターンもあると思います。現在、いろいろな業種のパートナーとそういった可能性についてお話ししているところです。
――民泊新法によって恩恵を得られるのは、地方の空き家所有者が中心になると。
いえ、都心もまだまだユニークな楽しみ方があると思います。Airbnbの面白さは、やはり「人」を中心にしているところです。たとえば、同じ下北沢でも、(泊めてもらう相手が)音楽業界の人と、建築業界の人では、全く違う下北沢が見えます。場所ではなく人の切り口にすることで、もっともっとディープな日本を楽しむことができます。
すでにこういう旅のスタイルを自身で楽しまれている方はある程度イノベーターだと思います。ただ、もう1人誰かに手伝ってほしいという方がたくさんいるので、(民泊新法によってユーザーが広がれば)そこで手伝いますよという次の層が増えると思います。利用頻度は低いかもしれませんが、人数は多いので、我々がそこをよりサポートしたいですね。
――楽天やレオパレス21など、日本の大手企業が相次いで民泊事業に参入していますが、勝算は。
我々が他社と違うのは、民泊だけでなくホスピタリティの会社として、体験を含めたトータルソリューションを提供しているところです。ただ、(民泊市場は)まだスタートしたばかりですので、いきなり競合同士で食い合うということではなく、ともに市場を盛り上げていく形になると思います。我々1社だけでやるよりも、複数社で市場を育てたほうがいいと思いますので、これからが楽しみですね。
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