thyssenkruppでは現在、現場のメンテナンスチームによって100台のHoloLensが使われている。Sanchez氏は、「彼らがHoloLensを使用し、われわれは常にフィードバックを得ている」と話す。同社は世界中に2万4000人以上の整備技術者を抱えている。これまでの展開は控えめだが、HoloLensには技術者のトレーニングなど、ほかの分野でも可能性がある、とSanchez氏は語っている。
「例えば、2m×2mのマシンだったら、トレーニング用の部屋に持ち込むことはできないかもしれない。光で作られたホログラムなら、1対1のデジタルモデルを持ち込んで、すべてのパーツを爆発させたり、物体の中で動き回ったりすることができる。それは全く新しいトレーニングの方法を作り出す」(同氏)
さらに、同社は4月以降、ドイツとオランダ、スペインにおいて、チェアリフト事業でもHoloLensを利用している。このヘッドセットはデジタルの物体を現実世界に重ねるので、実際の物体を測定できなければならない。それにより、例えば、バーチャルな本を現実世界のテーブルの上に置くというように、デジタルの物体が現実の世界と相互に作用するような感覚を作り出すことができる。
階段昇降機の設置を望む顧客のために、この機能を利用して、階段を10分以内で測定およびスキャンすることもできる。その後、その階段昇降機を家に設置したらどのように見えるのかを、HoloLensでその顧客に示すことができる。
以前は同じことをするのに、100本のマーカーが入った箱を使い、さらに何枚も写真を撮影していた。その後、それらの写真は階段の3Dモデルを作るのに使われ、完成した3Dモデルを営業担当者が顧客の元に再び持っていかなければならなかった。Sanchez氏は、「リードタイムを4分の1に短縮することができた」と話す。
「70歳や80歳の人にHoloLensを渡して、リビングルームにホログラムが映し出されるのを初めて見てもらうときの様子を想像してみてほしい。今までとは全く違う体験だ。彼らは、家の中でチェアリフトを見ることができるプロセスを本当に楽しんでくれた」(同氏)
ARはまだ新しいテクノロジである。ARは現実世界を考慮に入れる必要があるため、VRより構築が難しい。例えば、ARのキットは今でも極めて高価だ(HoloLens開発者モデルが33万3800円、セキュリティ機能が追加された商用モデルが55万5800円)。Microsoftは最近になってようやく新しいパートナープログラムを拡大し、同ヘッドセットをベースとするパッケージを開発および販売するようインテグレータに促している。
同テクノロジのアーリーアダプターには、ほかに日本航空やVolvoなどが名を連ねている。日本航空は航空整備士向け訓練プログラムの概念実証(POC)を構築し、Volvoはショールームアプリのテストを実施した。
テクノロジ分析企業IDCの予測によると、2021年には、Microsoftを含むさまざまなベンダーによって(2016年のわずか約16万台から増加し)、約2500万台のARヘッドセットが出荷される見通しだという。しかし、約6700万台というIDCが予測する2021年のVRヘッドセットの出荷台数と比べると、2500万台という数字はまだそれほど多くない。
IDCのプレスリリースには、次のように書かれている。「これは、ARの重要度が劣るからではなく、むしろ作り上げるのがより難しいためである。ARは概して業界全体にはるかに大きな影響を及ぼすだろう」
したがって、拡張現実が最初に目に見える形で成功を収めるのは、消費者向けゲームではなく、エレベータ修理のようなニッチな分野なのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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