筆者は2016年の7月、近所の通りにキャタピーやポッポがいないか探しながら、職場まで歩いていたことを今でも覚えている。スマートフォンを「スタートレック」シリーズに登場するトライコーダーのように手にしながら、辺りを見回していた。
もちろん、2016年の7月には誰もがスターバックスや公園、動物園で同じことをしていた。それは一時的な流行だった。だが、モバイルや拡張現実の分野で、おそらくこれから起きるであろうことの前兆でもあった。
仮想現実(VR)が2016年にうたわれていたように、拡張現実(AR)は2017年のキャッチフレーズとなっている。GoogleからMicrosoft、Facebookまで、そして最近では、おそらく最も印象的だったであろうAppleまで、あらゆる大手テクノロジ企業がARに進出しているように見える。2017年秋までに、多くの「iPhone」が本体のレンズと小さなスクリーンを通して3Dの物体を現実世界に投影できる、本格的な携帯式AR端末になるだろう。とりあえず、ヘッドセットのことは忘れてほしい。ARはソーシャル性とコミュニティー性、モバイル性を備えたものになる。
そう、まさに「Pokemon GO」と同じように。
Pokemon GOは純粋なARの例ではない、と主張する人もいるかもしれない。筆者はもちろん、Pokemon GOは純然たるARだと考えている。ARとは、現実世界に情報を重ねることだ。
もっと言えば、そんなことはどうでもいい。どのみち、ほとんどの人は、ARが何かさえいまだに分かっていない。だが、Pokemon GOが何かは知っている。
さらに、Pokemon GOはARに関して、多くのことを適切に実装している。将来、情報を世界地図に重ねることがどのような感じになるのかを純粋に表現しており、Nianticの以前のアプリ「Ingress」から進化を遂げている。Ingressはソーシャル性とモバイル性を備えた拡張現実の本当の始まりだったが、Pokemon GOはよく知られたキャラクターたちによって、それらのアイデアをメインストリームに押し上げた。Pokemon GOは常に完璧かつシームレスに何かを現実世界に重ねるわけではないが、誰がそんなことを気にするだろうか。ほとんどの人にとっては、ゼニガメが玄関先の横に姿を現してくれるだけで十分である。それが限りなく無料に近いことを考えると、なおさらだ。
拡張現実の勃興を受けて、さまざまなものを現実世界に重ねようと試みるアプリが急増するだろう。それらを把握して体系化するのは、難しい作業になるはずだ。しかし、Pokemon GOは少なくとも、さまざまな形態のARが大きなバイラル性とソーシャル性を持ちうることを示してくれた。
筆者は数カ月でPokemon GOをやめた。筆者にとって、それはひと夏のブームだった。プレーヤー数は数千万人まで減少したが、ARが何かを知らない、または全く興味のない人に対してARを説明するときに、Pokemon GOの名前を出すことが、最も分かりやすい方法となった。それ以前のどのARアプリとは異なり、Pokemon GOは分かりやすい事例なのである。「ポケモンが○○と融合」といった多くの宣伝文句や、「ARのPokemon GO」と呼ばれるさまざまなものが今後登場すると予想されるのはそのためだ。
金銭的な成功という視点から見ても、Pokemon GOは模範となる事例である。開発元であるNianticによると、Pokemon GOの4月の月間ユーザー数は6500万人だったという。さらに、これまでの売上高が10億ドルを突破していることをさまざまな試算が示唆している。参考までに、最大規模のVRプラットフォームであるサムスンの「Gear VR」は、これまでに約500万台のヘッドセットを出荷しているが、その多くは、「Galaxy」スマートフォンの購入者に無料で提供されている。
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