凸版印刷とデンソーウェーブは7月10日、アップルのiPadと連動したICタグを読み取れる通信機能付き「薬箱」を共同開発したと発表した。
これにより、患者の薬の飲み忘れ防止や「残薬の見える化」に役立つほか、医師や家族が服薬履歴を確認できることで、診療の遠隔地からの見守りサービスにも役立てられるとしている。
日本では、年間で100億円から6500億円分の薬が飲まずに放置されているという報告(平成27年度厚生労働科学特別研究)があるという。薬の過剰処方は医療保険財政を逼迫する要因の一つだが、そもそも家庭の残薬を正確に把握するすべがない。また、誤った飲み合わせによる健康被害も発生しているという。
また、核家族化の進行により、1人暮らしの高齢者も増加している。全世帯中の11.8%が65歳以上の単独世帯であり、孤独死なども社会問題となってきている。そうした中で、「薬包」をIoT化することで、“残薬の見える化”と“見守り”を両立させられるのではないかと考えたという。
凸版印刷がテクノロジを活用した医療分野に関わることについて、意外に感じる人もいるかもしれない。「2017年は“可能性をデザインする”というスローガンを掲げている。凸版印刷は、印刷を生業にして100年以上。印刷は情報を加工し、皆様の一番近い暮らしへと届ける商売。これまでのノウハウをもとに未来に貢献し、いままでにないものをデザインしていく取り組みをしている」(凸版印刷 生活・産業事業本部 ビジネスイノベーションセンター 事業開発販促本部 マーケティング部 課長の藤川君夫氏)
凸版印刷は、ICタグ薬包と通信機能付きの薬箱を開発。デンソーウェーブは通信機能付き薬箱に組み込む、複数のICタグを読み取れる920MHz帯 RFIDの読み取り技術を提供した。
また、アプリケーションの作成には、アップルの健康管理アプリ用フレームワーク「CareKit」を活用した。iPadとCareKitを組み合わせた服薬管理システムは日本で初の実装という。
多くの人からデータを収集し、医学の研究に役立てる「ResearchKit」に対し、CareKitは特定の人たちを見守るためのデザインテンプレート集だ。家族や老人ホーム、市民といった特定の人に対し、研究管理ができるもの。
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