HomePodのアプローチと筆者の考えが同じだったと感じた理由は、スマートホームのハブとしてのスマートスピーカの立場は、現段階では家の中にない、ということだ。
そもそもスマートホーム関連機器のラインアップも充実していないし、住環境によっては誰もがリプレイスできるのは電球ぐらいだ。また、スマートホームを突き詰めれば、ハブとしての機能こそ必要だが、別に声でコントロールできなくても役割は果たしてくれる。
そこでAppleは、Apple Music時代にふさわしいホームスピーカとして、HomePodを紹介した。前述のように筆者の家にはAmazon EchoもGoogle Homeもあるが、いずれも、キッチンに置いたポータブルラジオを聞いているようで、家の中における主たる音楽スピーカにはなり得ない。
Appleは「iPod」「AirPods」の名前を彷彿とさせる同社のオーディオ製品に用いる「Pod」という言葉を使い「HomePod」をオーディオ機器として紹介したのである。
HomePodには7つのツイータとそれぞれに独立したアンプを備え、ウーハまで内蔵し補正用のマイクまで内蔵する。またA8プロセッサを用いたオーディオ処理によって、ツイーターで直達、間接の音を振り分け、部屋をサラウンドで包み込む。
米国、英国、オーストラリアの英語圏で12月から先行発売されるため、米国の記者は視聴の機会があったそうだ。聞いた記者によると、「目の前に1つのスピーカがありながら、そこから音が聞こえていないような、不思議な感覚」であると語っていた。
1つ置けばリビングでリッチな音楽体験を作り出せる、そんな機能で「ホームスピーカの再発明」というタグラインを付けたのだ。
AppleはHomePodに話しかければ、iPhoneなどの操作なしでもApple Musicのストリーミング音楽をすぐに再生できるとしている。
いままでのBluetoothスピーカでもワイヤレスで音楽再生を楽しめたが、iPhoneの音楽再生機能を使っている限り、電話がかかってきたり、YouTubeを見ようとしたりすると、部屋のBGMも止まってしまっていた。HomePodは独立してストリーミング再生をするため、そうした心配がないのだ。
HomePodはストリーミング音楽時代のホームスピーカとして紹介されたが、あと2つほどの役割を担っている。その1つは、「人々にスマートホームに対して目を向けてもらうきっかけ」だ。
HomePod紹介はWWDC 2017の基調講演の6つ目のトピックだったが、それ以前のiOS 11の紹介の際、HomeKitの拡張として、捜査対象のデバイスに「スピーカ」が追加された。
まだHomePodが披露される前だったため、「おや?もうスピーカが披露されるのか?」と勘ぐった聴衆も少なくなかったはずだ。
HomeKitにスピーカが追加され、iPhoneの音楽ソースを複数の部屋で再生することができるようになった。HomePodを含むAirPlay 2スピーカに対して、iPhoneやApple TVなどから、1つの音楽を複数の部屋で同時に再生することができるようになる。
HomeKitにスピーカが追加されたことで、より多くの人たちがHomeKit対応デバイスを操作するアプリ「Home」(ホーム)に触れる機会が多くなるのではないか、と予測できる。
Homeでは、それぞれの対応デバイスがどの部屋にあるか、という部屋割りを設定する。電球やサーモスタットなどのデバイスとともにスピーカを加えて、部屋ごとのコントロールを実現できるようになるのだ。
そして、これらをSiriやiPhoneのコントロールセンターなどから一元管理できるようになる。例えば、「おやすみ」とSiriに言うと、リビングの電気が切れて、寝室は夜間照明になり、寝付くのを助ける音楽が流れ始める。そんなオートメーションも可能になるのだ。
HomeKitのスピーカサポートは、そうしたスマートホームやオートメーションのきっかけを与えることになるのではないか、と考えている。
Appleは各デバイスにおけるプライバシーとセキュリティには最も気を遣っている企業だ。HomePodではSiriが使われるが、音声認識はサーバとの間でエンド・ツー・エンドの暗号化が施され、匿名化されて一定期間のSiriの品質向上に用いられた後、削除される仕組みは共通だと考えられる。
その点から考えると、先行するAmazon EchoやGoogle Homeと比較すると、AppleのHomePodはもっともプライバシーに配慮したスマートスピーカ、と評価することができる。
またHomePodにはA8プロセッサが入っている。これはiPhone 6に内蔵されていた64ビット2コアプロセッサであり、実は4Kビデオ再生の能力もある第4世代Apple TVにも内蔵されているチップだ。
現段階ではHomePod向けのアプリ開発に関するアナウンスはされていないが、もしそれが実現するなら、Apple TV同様Core MLによる機械学習モデルを生かしたアプリの実行を行うこともできるようになるだろう。
Appleはいくつかの方法によって、スマートホームに機械学習を、オンサイト、すなわちサーバを介さずに処理する形で導入する手段を得たことになる。
次回はCoreMLとアプリ開発の変化についてお伝えする。
iOS 11に見るカメラ機能の進化--新コーデックHEIF、HEVCのメリットとは - CNET JapanCNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」