パナソニック、2016年度は6年ぶりの増収--創業100周年に向け「今何をすべきか」

 パナソニックは、6月29日、大阪市中央区の大阪城ホールで、第110回定時株主総会を開催した。

 会場には5578人(2016年実績は5431人)の株主が出席。株主総会の様子がハイビジョンブロードバンド中継された東京会場では648人(同607人)、名古屋会場では588人(同485人)の株主がそれぞれ出席した。

大阪会場には5578人が出席した
大阪会場には5578人が出席した

1兆円の戦略投資は50%完了で意思決定が30%、残りは成長領域へ

パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏
パナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏

 議長を務めたパナソニック代表取締役社長の津賀一宏氏による開会宣言後、ビデオを通じて、2016年度の業績を説明。「成長への足固めの1年」として、成長事業の仕込みをしてきたことを強調。パソナニックとパナホームのリフォームブランドの統一のほか、パナホームを完全子会社化したことに触れたほか、スペインの自動車部品メーカーであるフィコサの連結子会社化、米ハスマンの買収による連結子会社化、ベルギーの物流支援企業であるゼテスの連結子会社化を行ったことなどを説明した。

 津賀社長は「2016年度は減益となったが、為替を除く実質ベースでは、6年ぶりの増収。持続的な成長に向けた大きな一歩になった」と、2016年度の業績を総括。また、対処すべき課題と今後の取り組みについては、「より良いくらし、より良い世界」の実現に向けて、家電、住宅、車載、BtoBの領域で事業活動をしていることを示しながら、2018年度には、営業利益4500億円、当期純利益で2500億円以上を目指していると説明した。


2016年度は「成長への足固めの1年」として、成長事業の仕込みをしてきたことを強調した

 家電事業については、「国内家電市場において、シェア27.5%と過去30年間の最高記録を達成。今後もシニア、ファミリー、若者といったそれぞれの生活様式にあわせた製品を投入し、さらなるシェア向上に取り組む。また、海外では開発、製造、販売が一体化した事業戦略が必要であり、その体制構築に取り組んでいる。現地のニーズにあわせた製品を投入していくことになる」とした。

 住宅関連事業では、「強い部材事業で生み出した資金を活用し、顧客と直接向き合うBtoC事業を伸ばす。リフォーム事業では顧客1人1人にあった提案を進め、介護事業では安心で、高品質なサービスを提供する。新築着工が進んでいるアジアでは配線器具などの成長市場で攻勢をかけ、国内で縮小している太陽電池事業はテスラとの協業によって、米国市場において、ソーラールーフ向けセルなどを供給する」と語った。

 また、車載関連事業では、車載コックピットなどの「快適」、自動運転などで求められる「安全」、環境対応車向け製品による「環境」の3つの切り口で展開。「なかでも、車載電池分野が車載事業を引っ張ることになる。この分野では先頭を走る考えである。テスラとの協業による新工場の稼働に加えて、中国・大連の新工場を2017年度中に稼働させる」と述べた。

 BtoBでは、日本マイクロソフトで社長などを務めた樋口泰行氏が、コネクティッドソリューションズ社の社長に就任したことを紹介。今後のBtoBへの取り組みとして、物流分野における物流量増大、人手不足などの業界課題を解消するために、製品や技術を活用し、業務効率化や省人化を実現していることも紹介した。

 さらに、1兆円の戦略投資の進捗状況についても説明。現時点で、50%が投資を完了し、30%が意思決定としていることを示しながら、「残りの20%については、車載などの成長領域を中心に、リスクを慎重に見極めて投資を進めていく」と語った。

「水道哲学」は社会にどう役立つのかを考えた経営理念

 なお、午前10時45分頃から、株主からの質問を受けた。

 アプライアンス社とオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社において、売上高が横ばいであるにもかかわらず、営業利益が倍増していることについての指摘には、アプライアンス社社長の本間哲朗氏が、「テレビ事業への投資を縮小し、エアコンと白物家電に投資を集中。白物家電が成長を遂げているアジアと中国が伸びている。だが、テレビが中心だった欧州は減少している。世界の競合と変わらない収益性を実現できたと考えている」とし、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社社長の伊藤好生氏は、「従来はICT業界向けの販売が多かったが、これはPCの販売不振などにより、減少している。だが、4年前から、車載分野に事業展開を進めており、これで売上減少をカバーしている。構造改革費用や法務関連費用がなくなり、売上高の増加がそのまま収益に直結している」と回答した。

 リチウムイオン電池の発火問題については、品質を担当する代表取締役専務の宮部義幸氏が回答。「リコールを実施しており、順調に回収が進んでいる。発火の原因は生産時に極微量の異物が混入し、それがもとで、経年変化により発火するのが原因。生産時の異物混入撲滅に取り組んでおり、それは完了している。また、使用時の状況が把握できるような取り組みをしている。当社の完成品のなかにリチウムイオン電池を使用しているケースも多いが、設計基準の追加、再点検をしており、安全にリチウムイオン電池を使えるようにしている」としたほか、津賀社長が「リチウムイオン電池は、テスラの電気自動車に使われる重要な商品である。ここで品質問題が起きていることを深く受け止めている。全力で品質改善に取り組んでいる。そして、品質改善に取り組むことが他社との差別化につながる」と回答した。

 テスラとの関係が下請けのように見えるとの指摘については、「納入する相手先ということで、相手を呼び捨てにはできない文化がある。そこで今回の株主総会での発言もテスラ様となっている。下請けになっている気持ちはない。一緒になって新たな世界を作っていこうと考えている」と、津賀社長が回答した。

 パナソニックの製品が壊れやすいという指摘については、アプライアンス社の本間社長が、「多くの機能を搭載したり、技術を採用することで、使いにくさがでることは反省している」と発言。津賀社長は、「パナソニックブランドがついている限り、しっかりした製品を提供していきたい」と述べた。また、電動で昇降するパナソニックのウォールユニット(棚)を使用し、棚の角にぶつけて怪我をしたという株主には対しては、津賀社長が「申し訳ない」と謝罪。「くらしに寄り添うという意味では重要な案件である」としたほか、ハウジングシステム担当役員の山田昌司氏が、「こうした案件は、事業部にフィードバックし、スピードをあげて商品の改良につなげている。より敏感になって、品質のレベルをあげていく」と回答した。

 一方、パナソニックが2018年度に創業100周年を迎えることにあわせて、今後の100周年の方向性に関する質問には、「創業者の理念を継承したいという思いは、これからも同じである。創業者は、水道のごとく豊富に物資を提供する『水道哲学』を掲げたが、これは貧困からの脱却という願いがあったといえる。社会にどうお役立ちするのかを考えたものである。また、創業者の言葉には、『将来いかに大をなすとも、常に一商人なりとの観念を忘れず』があり、これは私が大好きな言葉の1つである。おごり高ぶり、上からの目線で見るのではなく、どんな困りごとがあって、なにを求めているかを知ることが大切であり、メーカーになっても、商人の考えが必要であることを説いたもの」とし、「我々が、これから100年に向けて、新たに考えることはなく、経営理念をもとに今、何をすべきなのかに置き換えることが、これから我々がやるべきことである。パナソニックは、家電メーカーとしてお役立ちをしているが、今後、それだけでお困りごとを解決し、社会の公器としてのお役立ちができるのかを考えると難しい。日本では高齢化、人口減少の課題があり、中国では大気汚染の問題がある。これは繁栄の裏返しの課題である。それぞれの地域に身をおくことがこれまで以上に大切である」とした。

 なお、第1号議案の定款一部変更の件、第2号議案の取締役12名の選任の件については可決された。第2号議案では、樋口泰行氏と梅田博和氏が新任取締役に選任された。

 株主の質問のなかでは、梅田氏が1000株しか所有していないことを指摘され、株式所有と愛社精神は連動するのではないかとの意見もあったが、梅田氏は、2人の息子が、私立の大学受験と高校受験が重なり、教育資金が必要になり、5年前に株式を売却したことや、その後、担当した部門では経営戦略の策定に関わることから、インサイダー取引に抵触する可能性があり、株式を買い増すことができなかった経緯を説明。「来年の株主総会での株式数を見てほしい」と回答し、会場からは大きな笑いがおきた。

 午前10時からスタートした株主総会は、午前11時56分に終了した。


株主総会の様子

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