洗濯物を折りたたみ、使用者ごとにより分けてクローゼットに収納してくれる──。そんな夢のような機械「Landroid」が展示されたのは2015年のCEATECだった。開発元のseven dreamers laboratoriesはこのとき、パナソニックおよび大和ハウス工業との提携も発表し、大きな話題をさらった。
あれから1年半、洗濯物折り畳み機「Landroid」の製品版が登場。9月下旬から正式に受注を開始する。発表内容に関しては別途、発表会レポート記事を参照していただくとして、洗濯物折り畳み機がなぜ”夢”の技術で、どのようにして実現したのかについてお伝えしたい。
Landroidを開発したseven dreamers laboratoriesは、技術開発力や商品化のキーテクノロジに加え、他社にないユニークな開発テーマの選び方など、“型にはまらない”面白さがあるテクノロジベンチャーだ。
seven dreamers laboratories代表取締役社長の阪根信一氏に同社の歴史を聞くと、そのキテレツとも言える紆余曲折の過去に、日本のテクノロジーベンチャーにはない技術に対する向き合い方、製品づくりに対する姿勢が見えてきた。
「洗濯物を自動的に折り畳み、分類する製品を実現できれば、(実際のところまだ多い)家事を預かる女性が自由に使える時間を取り戻せる。さらに誰の衣類なのかを考え、仕分けして異なる引き出しに収納してくれる。システムの作り方によっては、各部屋への配送もできる」
Landroidのコンセプトは明快だ。少子化が進む日本だけでなく、グローバルで見ても女性の労働力、発想力、男性とは異なる感性を活かそうという動きは注目されているが、少なからず”家事”がそれを阻んでいる面はあろう。
製品版の価格は直販サイトで185万円からとしており、初期のLandroidを購入できるのは経済的に恵まれた世帯となるだろう。しかし、家事を自動化することで、家族との時間や自分の時間を増やして新たなことにチャレンジできる側面もある。
過去の生活家電は、その多くが家事を効率化するために生まれてきたことを考えれば、Landroidはまさに王道中の王道とも言える白物家電だ。しかし、その開発は困難を極めた。開発に必要な技術要素と方向性は定まっていたが、求められる技術要素のレベルに時代が追いついていなかったためだ。
Landroidの実現には、「ロボティクス」「映像処理技術」「AI」の3つの要素が必要となる。それぞれ人間の手、眼、脳を代替するが、中でも適切に状況を認識・識別して的確な折り畳み方法や服の持ち主を判断するAI部分が開発の鍵となった。
その話は記事の最後に紹介したいが、大手家電メーカーの多くが検討しながら断念してきた自動洗濯物折り畳み機をseven dreamers laboratoriesは12年かけて開発してきた。技術ベンチャーが12年もひとつの技術に賭けて開発を続けられたことも驚きだが、阪根氏のインタビューを始めてみると、同社の驚くべき歴史が浮かび上がってきたのだ。
最後の大型白物家電を実用化したベンチャーは、実は白物家電と縁もゆかりもなかっただけでなく、実に多様な製品に取り組んでいた。理想を掲げて突き進んだ結果、Landroidへと結実する二転三転の物語がそこにはあった。
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