洗濯物折りたたみ機「Landroid」が誕生するまで--社長が明かす紆余曲折の12年 - (page 4)

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時代がコンセプトに追いついた--実現の鍵はAI

 これは後日談だが、seven dreamers laboratoriesに出資したパナソニックは、実は自動洗濯物折り畳み機が実現可能か、過去に検討したことがあったそうだ。検討はしたものの、実現は不可能とレポートされ本格的な開発には至らなかった。同社がseven dreamers laboratoriesに出資したのは、実現困難と思われた製品を、驚くほどシンプルな実装で実現していたからだった。

 ところがもうひとつ、隠された話がある。阪根氏の父は松下幸之助氏と交流があり、1983年に工場建設のためメキシコのティファナを訪れた時、外国語がしゃべれるからという理由で運転手として旅路を共にした。このとき幸之助氏は「洗濯物の自動折り畳み機を作ってみたけれど難しい」と話していたのだそうだ。

 さて、話を戻そう。世の中に存在しないということは、そこに技術的な大問題があるのではないか。そこで阪根氏は、繰り返し、繰り返し、自分で洗濯物を折りたたんだ。

 手で洗濯物をつかみ、それを拡げ、目でそれを見てどんな衣類なのかを認識。衣類の種類ごとに決また形でたたんでいく。必要なのは人間で言うところの手と、眼と脳であることがわかった。それぞれロボティクス技術、イメージ処理技術、そしてニューラルネットワークを用いれば実現できるのではないか。

イノベーターモデルの「laundroid Ø (ランドロイド・ゼロ)」。税込270万円。限定100台だったがすでに完売した
イノベーターモデルの「laundroid Ø (ランドロイド・ゼロ)」。税込270万円。限定100台だったがすでに完売した

 開発を始めた2005年当時、「5年かければできる!」とチャレンジを始めた。しかし実際に開発を進めると、”衣類の形状・種類を認識する”ことが想像以上に難しいことがわかってきた。柔らかい布だけに、ランダムにロボットアームで持ち上げても、その形状は安定しない。広げ方に変化を与えると、どんどん情報が増えていく。複数のイメージセンサーを周囲に配置し、3Dで衣類の形状を何度も認識しながら判別し、正しい形へと拡げてからたたむ。膨大な映像情報を処理した上で、たったひとつの答を導き出すには、コンピューティングパワーの増大が必要だった。

 クラウドコンピューティングの普及と低価格化がなければ、Landroidは実現できなかっただろう。あまりの困難さ、大企業も含めて誰も実現していないテーマ。最初に集めた5人のエンジニアのうち、現在もチームに残っているのは1人。いずれも社内には残っているが、他の研究開発テーマへと移っていったそうだ。

 現在、Landroidが実現できていないのは「ボタン留め」「靴下のペアリング」「裏返し」の3つ。このためYシャツはそのままでは折りたためないが、3つぐらいボタンを自分で留めておけば、きちんと折りたたんでくれるという。

 ボタン留めと裏返しの実現は困難だそうだが、靴下のペアリングは画像認識の精度向上で実現できる見込みだそうだ。なお、認識できない……つまり対応していない衣類は、たたまれないまま引き出しの中に収まったままとなる。

 まだ生まれたばかりの自動洗濯物折り畳み機は、確かに高価で大きな製品だ。しかし、ひとたび実現可能となったなら、さまざまな知見が集まり、また消費者からのフィードバックも入って伸びていくのが工業製品でもある。Landroidは確かに、今後、同社の成長を担う製品になっていくだろう。

 阪根氏はseven dreamers laboratoriesを、2030年までに3500億円の売上げ規模と30%利益率実現する技術オリエンテッドな会社にすることを目指しているという。その発想力と実行力、熱意を考えれば、それまでの間、何度でも斬新な発想と技術で世の中を驚かせてくれることだろう。

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