洗濯物折りたたみ機「Landroid」が誕生するまで--社長が明かす紆余曲折の12年 - (page 3)

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最も高価なものは1200万円--スーパーレジンだからできる技術

 「世の中にはカーボンシャフトのゴルフクラブなんていくらでもあるじゃないか」と思うだろうが、樹脂率の低いレーシングカークラスのカーボンFRP素材(樹脂が少ない、乾いたカーボンという意味で“ドライカーボン”と言われる)で作られているのはseven dreamers laboratoriesの製品のみという。しかも好みのグリップとヘッドを指定し、他社製品のヘッドも取り付けられる上、指定された硬さにカスタマイズできる。

 多くのカーボンシャフトは、熱収縮素材でカーボン繊維素材を巻き、それを吊して焼くことで(収縮による)圧力をかけて製造している。しかし、この方法では樹脂率を高めることはできない。そこで金型や製法を工夫し、レーシングカーのシャシーと同じ高圧で生産することでカーボンFRP素材本来の製品を引き出した。

 同製品にはいくつかのグレードがあるが、最も高価なものは1200万円。破格の設定だが、完全なドライカーボンとして高圧で焼成する技術は、彼らが買収したスーパーレジンでしか実現できないものだった。

 スーパーレジンは阪根氏が将来を見すえて買収した素材企業。日本ではレーシングカーデザイナーの林みのる氏が使っていたほか、ムーンクラフトの由良拓也氏が”憧れ”と話したカーボン素材企業だが、その素材企業を持つ会社の2つ目の製品が、チューブを鼻の穴に挿入するナステントだったというのは意外と言えよう。

 しかし、阪根氏はまったく”意外”とは感じていなかった。すべて技術的に、事業構想的には一連のつながったものだと感じていた。

 ちなみにナステントと同時期に開発を進めていたアルツハイマー診断薬は、マウスでの試験を経てサル、そしてヒトへと治験を進める段階で断念したという。マウスでの実験は成功していたものの、サルを使った実験へと移るには1検体あたり100万円の原価がかかることがわかり、とても開発完了まで持ちこたえられるとは思えなかったからだ。

 「当時、ナステントの商品化が見え始めていた時期でもあり、資金をナステントの立ち上げに集中させるために断念した。現在も特許や過去の治験結果は残っているので、いつかは挑戦してみたい」(阪根氏)

 しかし、2014年7月にナステントを発売すると、発売以来の2年半で100万本を販売。右肩上がりに利用者は増加。現在は日常的にナステントを装着して睡眠するユーザーは5万人にまで増加した。昨年後半から爆発的に増加し、近くセブン&アイ・ホールディングスの各店舗でも販売。さらに利用者は広がりそうだ。

 ナステントは前述した医療機器向けの特殊部品事業に代わって、seven dreamers laboratoriesの屋台骨を支えるキャッシュフローになっていくと見られる。しかし、なぜここから”自動洗濯物折り畳み機”へとつながるのか?

手持ち技術の応用ではなく”ニーズありき”の事業計画

 ナステントの商品化は2014年を待たねばならなかったが「間違いなく(開発に)成功する」と確信していた阪根氏は、seven dreamers laboratoriesの事業を拡大するにあたって、コンシューマ向けに誰もがその名を憶えてくれるような、興味を持ってもらえるB2C製品の構想を並行して練った。

 では何を開発するのか。少し時期を遡って、seven dreamers laboratoriesが設立されていなかった2003年から2年をかけて「研究開発テーマを探し続けた(阪根氏)」という。その結果、見つけたのが自動洗濯物折り畳み機だった。

 阪根氏がユニークなのは、手持ちの技術を用いて商品を企画するのではなく、“世の中に必要とされる製品を実現するための研究開発”をテーマに選んでいることだ。もちろん、安定した収益をあげてくれる事業をすでに持っていたからこそ取り組めたのだろう。

 とはいうものの、2005年から2015年までの10年間、外部からの投資も受けずに収益を注ぎ込み続けてきたのだから、その想いは半端なものではない。

 阪根氏が”起業家人生をかけたテーマ”を決めるために設定したのは「世の中に存在しない(他社も商品化を前提とした研究開発をしていない)」「ひとびとの生活を豊かにする」「技術的なハードルが高い」の3つだ。

 「技術の先にイノベーションがありのではなく、ニーズの先にイノベーションがある。だから手持ちの技術にこだわるのではなく、まずは適切なテーマ設定を行って、それを実現するための技術開発を行うことが重要だと考えた」(阪根氏)

 「2年は長いのでは」と率直に質問すると、阪根氏は「技術的なハードルが高く、生活を豊かにするテーマはたくさんあるが、世の中に存在しない製品テーマがない。大抵の場合、それが未成熟なものであったとしても製品や研究成果などが存在し、何らかの特許が取得されている。これで99%のアイデアは条件に満たない」と答えた。

 そこで思いついたのが、女性の考えを聞くことだ。seven dreamers laboratoriesに限らず、多くの研究開発拠点は男性社会だという。しかし、世の中の半分は女性であり、また子どももいて、今後は老人の比率もどんどん高まっていく。そこで、男性だけの発想でテーマを考えるのではなく女性の意見を取り入れようと視点を変えた。

 「自宅に戻って妻に『家事をするとき、これがあると便利。自分の時間が増えるという製品、それも世の中に存在しないものはないか?』と尋ねると、『自動洗濯物折り畳み機』と彼女が言った」(阪根氏)

 それからすぐ、阪根氏は関連特許や論文がないかを徹底的に調べた。ところが、まったくネットのデータベースでは引っかからない。もしかすると……と思いながら、若手の研究者を2名ほど集めて本格的に関連技術を探してみたが、特許・論文は存在せず、唯一、サンヨーの30年事業ロードマップの中に、未来家電のコンセプトとして入っていただけだった。

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