楽天は4月21日、総合英語学習サービス「Rakuten Super English」の提供を開始し、英語教育事業に本格的に参入した。2010年10月より社内公用語を英語化し、従業員のTOEICテストスコアの平均点が830点(楽天単体)を超えるまでに成長した、同社の英語教育の経験やノウハウを新事業に注ぎ込む。
この第1弾として、エストニアのLingvistが提供する外国語学習ソフト「LINGVIST(リングビスト)」を主にビジネスパーソン向けに、また楽天グループのReDucateが提供する英語学習アプリ「まなみ~」を学生などの若年層向けに公開した。いずれもPC、スマートフォン(iOS/Android)、タブレットのマルチデバイスに対応している。
「全社員で英語公用化に取り組んできたことで、経営陣や従業員を巻き込むノウハウや教材、仕組み作りなど多くの知見を持っている。また、従業員ごとのTOEICのスコアや使っている教材、学習時間などを分析していて、効果的なケースがあればそれを全社に展開するようにしている」――楽天 新サービス開発カンパニー インキュベーションオフィス 教育事業プロジェクト推進課 シニアマネージャーの葛城崇氏は、約6年半にわたり社内で続けてきた英語公用化の成果を生かすことで、後発ながら他の英語教育サービスに対抗したいと話す。
Rakuten Super Englishでは、2つのサービスを展開する。そのうちの1つである外国語学習ソフトLINGVISTでは、日常会話やビジネスの場で使われる頻度の高いフレーズや例文が出題され、ユーザーは空欄を穴埋めする形で単語などを入力する。間違えるとヒントや回答、解説文が表示され、その単語のスペルをなぞって自分でも入力することで記憶力を高める。AIで記憶パターンを分析しており、ユーザーの学習状況に応じて、コース内容を自動で変更するという。料金プランは無料の基本コースに加えて、480円からのTOEICコースを用意した。LINGVISTで課金コースを設けるのは日本が世界初だという。
葛城氏はLINGVISTについて、「その人が恐らくこの単語を忘れているだろうというタイミングで出題する。答えに詰まったときにはスペルの影を見せるなど、ヒントの出し方も絶妙で効率的に学習できる。また、アルファベットのAからではなく、実際によく使われている単語から学ぶことができる点もポイント」と高く評価する。
このサービスを生み出したLingvist創業者のマイト・ミュンテル氏は、もともと原子物理学者として、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)でヒッグス粒子を発見したチームのメンバーの1人。2013年のヒッグス粒子発見後、素粒子物理学のアルゴリズムを応用して、外国語を従来の10倍早く習得できる学習方法を考えつき、共同創業者とともに同社を立ち上げた。LINGVISTは複数の言語学習に対応しており、世界で累計60万人の登録ユーザーがいるという。2015年11月には、楽天主導のシリーズAラウンドで800万ドルの資金を調達した。
ミュンテル氏は日本の英語教育や英語力について、「日本人はあまり英語で会話することに対して積極的ではない」と話し、今後はLINGVISTにスピーキング機能を追加する予定であることを明かした。また日本展開にあたり、当初は楽天以外の事業者とも接触していたそうだが、「その中でも明らかに楽天は革新的かつ前を向いていて、インターナショナルだった」と、楽天をパートナーに選んだ理由を語った。
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