LINEは、2016年からチャットボットの活用を目指すオープンイノベーションの取り組みを本格的に進めている。「Messaging API」や「LINE BOT API Trial Account」といった開発者向け環境を公開し、企業や個人開発者がLINE上で機能するチャットボットを開発できる環境を整えた。また、3月には外部開発者を対象にした「LINE BOT AWARDS」を開催。国内外から815件にもおよぶ応募があったという。
LINEは、チャットボットの領域を推進することで、どのようなサービスの拡充を目指しているのか。LINE 広告・ビジネスプラットフォーム室 カスタマーコネクト事業企画チームの戦略企画担当ディレクターである砂金信一郎氏に、LINE BOT AWARDSを振り返ってもらいながら、同社が目指す世界について聞いた。
まず聞いたのは、なぜLINEはチャットボットに力を入れているのかということ。この点について砂金氏は、「ユーザー体験」と「ビジネス」という2つの側面から次のように語った。
「私たちは、LINEユーザーがチャットボットで簡単にお店の予約ができたり、今いる場所の情報を探せたりと、ちょっと便利になる未来を作りたいと考えている。一般のユーザーが裏側のテクノロジを理解していなくても、いつものコミュニケーションがチャットボットを介してより便利になる世界だ。その利便性の創出によって、チャットボットによって儲かる企業が生まれることを期待している。加えて、位置情報に基づいてユーザーに情報を届けられるBeaconやLINEログインといったテクノロジを包括的に提供することで、新しい世の中を作りたい」(砂金氏)。
ここで言う「儲かる」とは、LINEがAPIの提供を通じて儲かるという意味ではない。企業とユーザーがLINEのチャットボットというプラットフォームを通じてつながることで、企業に収益が生まれる世界を目指しているのだという。企業・店舗向けの「LINE@」は、これまでプッシュ型情報発信の手段として活用されてきた。これをチャットボットを介すことで、ユーザーのニーズに対して的確な情報発信がリアルタイムにできることになる。ここで生まれるエンゲージメントを新しいビジネス拡大の手段として活用してほしいというわけだ。「企業ブランドとユーザーの心の距離が縮まるために、チャットボットにできることがあるのではないか」(砂金氏)。
砂金氏によると、3月に開催されたLINE BOT AWARDSは、LINEのチャットボットに対する取り組みや、すでに開発・公開されているチャットボットを披露する場となり、予想を大きく上回る反響があったのだという。「LINE BOT AWARDSは、存在しているボットを多くの人に知ってもらう機会になればという考えで開催した。グローバルで815件の応募があったが、リクルートホールディングスが開催しているオールジャンルのハッカソンイベント『Mashup Awards』が応募数500件(年間)ということを考えると、チャットボットという一つのジャンルでこれだけの応募が集まったのは嬉しかった」(砂金氏)。
ちなみに、このLINE BOT AWARDSは個人の開発者だけでなく企業の応募も受け付けた。一般的にこのような開発コンテストでは個人応募と企業応募は開発力や資金力の違いなどを理由に分けて扱うが、LINE BOT AWARDSでは個人と企業が同じ土俵でコンテストを競ったのだという。
この点について、砂金氏は「ボットのアプリはネイティブアプリやウェブアプリと違い、サーバーエンドエンジニアがいれば開発者ひとりで実装できることが多く、アプリケーションの開発にあたってもAPIやSDKによって大部分がサポートされる。個人と企業で(開発力による)差異が生まれにくい状況で、アイデアひとつですごいチャットボットが作れるということを開発者の方々に理解してほしかった」と語る。
加えて、個人が開発したものと企業が開発したものを分けることなく、チャットボットによるユーザー体験をシームレスに提供したいという思いや、個人開発者と企業が相互に学びあい今後のチャットボット開発に活かしてほしいという期待もあったのだそうだ。
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