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LINEが「チャットボット」に本腰を入れる理由--仕掛け人の砂金氏に聞く - (page 2)

藤井涼 (編集部) 井口裕右2017年04月28日 08時00分
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世の中の“意識変革”を目指すグランプリ作品「&HAND」

 LINE BOT AWARDSでは、大賞をはじめさまざまな部門賞が決定したが、それらの受賞作からはどのような気づきが得られ、また課題が発見されたのだろうか。砂金氏にいくつかの受賞作品を紹介してもらいながら講評してもらった。

 まずは、今回グランプリを受賞した「&HAND(アンドハンド)」。身体・精神的に不安や困難を抱えた人がLINE Beaconに対応する端末を携帯し、手助けが必要な状況でBeaconをONにすると、周辺にいる“サポーター”と呼ばれる&HANDのアカウントを友だち登録しているユーザーにメッセージが届きサポートを促すという、チャットボットを活用した人助けの仕組みだ。

「&HAND」のイメージ
「&HAND」のイメージ

 「ハンディキャップを持っている人、困っている人を助けるためにチャットボットで何ができるのかという挑戦に、グランプリを贈ることができたのは非常に良かった。このチームは社会課題の解決手段を実装しようという有志の集まりなのだが、今後このプロジェクトを世の中に広めるためにLINEにできることがあれば協力していきたい。このプロジェクトを通じて、世の中に“困っている人に手を差し伸べよう”という気持ちが少しでも高まれば、これは私たちが目指している“Closing The Distance”というスローガンを体現するような取り組みになるのでは」(砂金氏)。

 この仕組みの興味深い点は、Beaconの使い方だ。一般的にBeaconの位置情報送受信機は店舗などの施設に固定して使用するが、今回の&HANDは手助けを必要とする人が直接Beaconを所持して位置情報の送信機として利用する。「手助けを必要とする人が移動しながら必要なときに自分の周りにジオフェンスを作ることによって、世の中に違う変化が生まれるのではないか。ハンディキャップを持っている人には、例えば“盲目の人が困ったときに白杖を上に挙げる”といった助けを求めるためのアクションがあるのだが、実はあまり知られていないことも多い。こうした課題に対して&HANDを当たり前に使うシーンが生まれれば、世の中が変わるのではないか」(砂金氏)。

受賞作品から見えてきたチャットボットの可能性と課題

 一方で、部門賞は10作品と多くの作品が入賞したが、これは「世の中にさまざまなチャットボットの存在を知ってほしい」という思いで受賞作を多く選定したのだという。それぞれの受賞作については既報の通りだ。

 砂金氏によると、部門賞の中で最も応募作品が多かったのは、ライフスタイル部門だったのだという。「開発者の中には“日常の身近な課題を解決したい”という意識の高い人が多かった」(砂金氏)。中でも、ライフスタイル部門賞を受賞したヤマト運輸のチャットボットは、現在社会問題化している宅配便の再配達問題に挑戦した作品だ。ヤマト運輸のLINEアカウントと友だちになって会員IDを連携すると、荷物の配達予定や不在通知をLINEで受け取り、受取日時や受け取り方法を変更できる。

ヤマト運輸はすでにLINEアカウントでチャットボットを活用している
ヤマト運輸はすでにLINEアカウントでチャットボットを活用している

 「ヤマト運輸のチャットボットはすでに多くのユーザーを抱えているが、再配達問題という社会課題を解決するために、ヤマト運輸がちょっと便利な仕組みをすでに提供していることを多くの人に知ってもらうために選出した。友だちと会話するシーン以外でも、身近な体験で気軽にLINEアプリを起動してもらう機会が増えれば、チャットボットはもっと普及していくのでは」(砂金氏)。

 ちなみに、今回はエンターテインメント部門の入賞が“該当なし”だったという。「もっと(ゲーム以外の)エンタメコンテンツをチャットボットで楽しむ方法を生み出してほしいという期待を込めて今回の結果となった。コンテンツを生み出すクリエイターにチャットボットの面白さを伝えていくことはLINEの今後の課題でもある。まだ“正解”がない分野なので、今後多くの開発者にチャレンジしてほしい」(砂金氏)。

 砂金氏は受賞作品から得られた気づきとして、「ネイティブアプリではなくチャットボットだから早くて便利だと思える機能やサービスとは何かということが重要になってくる。LINEを使った会話の中で、簡単にアプリを起動してニーズを解決するという状況をどのような利用シーンで作り出せるかがチャットボット全体の課題ではないか。開発や実装の効率性ではなく、従来のネイティブアプリよりも便利な場面をどうやって作っていくかは今後の試行錯誤の大きなテーマとなる」と語った。

 これは言い換えれば、ネイティブアプリを立ち上げる手間を解消することで価値が生まれる利用シーンや、会話の中で活用することに価値がある機能やサービスは何かということ。そこが明確でなければ既成のネイティブアプリで十分にニーズに応えられるということになる。

スタートアップ部門を受賞した「EncodeRing」
スタートアップ部門を受賞した「EncodeRing」

 たとえば、スタートアップ部門賞を受賞した「EncodeRing」は、LINEのアカウントから3秒間のボイスメッセージを送るだけで、音声の“波形”からオリジナルの指輪を製作してくれるサービスで、チャットボットをEコマースにつなげた点が大きな特徴だ。「制作したチームは、“これはネイティブアプリでもウェブサイトでもできるのではないか”という審査員の質問に対して、“LINEは恋人同士や仲の良い友人が会話を楽しむ場であり、その中でEncodeRingの利用シーンが生まれるのでは”と語っていた。LINEで心と心の距離が縮まり、そこからモノが生まれて贈ることでさらに親密になるというストーリーは、LINEが目指すべき世界を体現しているのでは」(砂金氏)。

 加えて、砂金氏は「シンプルで価値があり、すぐに使いたい、人に勧めたいと直感的に感じるアプリには大きな価値がある」と話す。応募作品の中には、さまざまな機能を盛り込んだチャットボットも数多くあったそうだが、「いろいろな特技を持ったチャットボットは、メンテナンスの負荷が大きく維持するのが大変。チャレンジは評価したいが、世の中に広めていくためには機能を切り出してそれぞれの機能に特化したチャレンジをするのが良い」と提言している。

 一方、砂金氏はLINE側の課題も語る。たとえば、現在のLINEのグループトーク機能では、チャットボットがトークルームに参加しているユーザーのIDを識別して処理することができない。「今後はチャットボットがユーザーごとの文脈を理解して個別に対応できるようなAPIの機能拡張をしたい。チャットボットは1対1の会話での利用を想定したものが多いが、みんなで会話している中でチャットボットが活躍するような利用シーンも生み出していきたい」(砂金氏)。また今後は、APIに課金モデルも実装して、新しいビジネスの創出を可能にする計画もあるのだという。

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