障害者をチャットボットで助ける「&HAND」に賞金1000万円--「LINE BOT AWARDS」

 LINEは3月18日、質問などに対して自動で返答するチャットボットの開発促進を目的としたアワード「LINE BOT AWARDS」の決勝イベントを開催した。最終候補24作品のプレゼンテーションと審査のうえ、障害者をチャットボットによって手助けする「&HAND(アンドハンド)」がグランプリに輝き、賞金1000万円を獲得した。

グランプリに輝いた「&HAND」
グランプリに輝いた「&HAND」

 LINEは、2016年9月にLINEのMessaging APIを一般公開し、外部開発者がLINEのチャットボットを自由に開発できる環境を用意。また、より多くのチャットボットがLINE上で利用されるように、法人・個人問わず応募できるLINE BOT AWARDSを発表し、2016年12月から作品を受け付けていた。

 冒頭で挨拶をしたLINE ビジネスプラットフォーム事業室の砂金信一郎氏によれば、募集開始から3カ月間で国内外から815作品が応募されたという。このうち、79%が個人開発者で、21%が法人だった。また、78%が社会人で、22%が学生だったという。国別の応募比率は日本が75%で、台湾から9%、インドネシアからも9%の応募があったそうだ。

LINE ビジネスプラットフォーム事業室の砂金信一郎氏
LINE ビジネスプラットフォーム事業室の砂金信一郎氏

 当日は最終候補に残った24チームが、開発した作品を5分の持ち時間でプレゼンテーション。「LINEらしさ」や「サービスの継続性」といった基準で、有識者など10人の審査員と当日の来場者が投票し、グランプリと各部門賞が決定した。

身体が不自由な人と助けたい人をつなぐ「&HAND」

 24チームの中からグランプリに選ばれたのは、目や耳が不自由な人と、その手助けをしたい周囲の人をビーコン端末「LINE Beacon」でつなぎ、チャットボットによって行動をサポートする「&HAND」(LINE ID:@jqv8293w)だ。

 手助けを必要する人がLINE Beacon対応端末を携帯し、電車が急停止した原因を知りたい、転んでしまって動けないといった、手助けが必要な状況でBeaconをオンにすると、周囲のサポーター(「&HAND」のアカウントを友だち登録している人)にメッセージが届きサポートを促すというものだ。

「&HAND」
「&HAND」

 &HANDアカウントを介して、手助けを求めるとサポーターが個別にコミュニケーションをとり、その時々で具体的に手助けが必要な内容をやり取りできる。今後は、サポートするために必要な情報をタイムラインに定期配信することによるサポーター育成支援や、訪日外国人への観光サポート対応などの展開も検討するという。

各部門賞に輝いたユニークな作品

 同日のアワードでは、グランプリは逃したものの、さまざまな視点で各作品が部門賞に選ばれた。

マイクロソフト賞「NAVITIME」(LINE ID:@navitime)

 言わずと知れた乗換検索サービス「NAVITIME」のチャットボット。乗換案内の要望を伝えると自動的に駅間の乗換経路や、時刻表、運行情報などの、最新情報を教えてくれる。たとえば「表参道駅から国際展示場正門前駅まで」と伝えると、おすすめの現在時刻発の乗換経路を返信してくれる。友だち数は63万人、月間の送信メッセージ数は32万件におよぶという。

「NAVITIME」
「NAVITIME」

学生部門賞「mitchy」(LINE ID:@sxp6856c)

 mitchyは、チャットボットによって学校の授業中などに教師と生徒たちがグループトークできるサービス。生徒のコメントは匿名で表示されるため質問が出やすくなるほか、授業の後にログをみて復習できる。また、教師のアカウントでは投稿した生徒の名前が見えるため、積極的に発言している生徒を把握できるほか、生徒がどこでつまづいたのか確認できるとしている。また、アカウントを通じて小テストを出すといったことも可能だという。

「mitchy」
「mitchy」

スタートアップ部門賞「EncodeRing」(LINE ID:@uil3575g)

 EncodeRingは、LINEのアカウントから3秒間のボイスメッセージを送るだけで、音声の“波形”からオリジナルの指輪を製作してくれるサービス。アクセサリーの種類やサイズ、素材などをカルーセルで選択していくだけで、簡単にデザインできる。価格は約3~13万円で、注文してから約2週間で手元に届くという。botを公開してから3カ月間で300個の注文があったそうだ。今後は完成した指輪にスマートフォンを近づけると音が再生される機能などを追加したいとしている。

「EncodeRing」
「EncodeRing」

ローカライズ部門賞「NgampusBareng」(LINE ID:@ngampusbareng)

 インドネシアからのエントリー作品であるNgampusBarengは、交通渋滞が深刻なインドネシアで、依頼者とドライバーをLINE上でマッチングする学生向けのバイク相乗りサービス。現在50以上のキャンパスで導入されており、1キャンパスあたり3000以上のマッチングが成立しているという。ドライバーは貯めた独自ポイントを、クーポンなどの特典と交換できる。

「NgampusBareng」
「NgampusBareng」

ライフスタイル部門賞「ヤマト運輸」(LINE ID:@yamato_transport)

 再配達の手続きなどを手軽に済ませられるヤマト運輸のチャットボット。同社のLINEアカウントと友だちになり、クロネコIDを連携すると、荷物の届け予定や不在連絡の通知をLINEで受け取れる。受取日時の変更やコンビニなどでの受け取りに変更することも可能。また、会話形式でのやり取りや荷物の送り状の発行予約(一部商品)にも対応している。公式アカウントは、1月19日時点で687万人もの友だちがいるという。

「ヤマト運輸」
「ヤマト運輸」

ゲーム部門賞「OneNightWerewolf Bot」(LINE ID:@nto6347b)

 チャットボットが「人狼」ゲームの進行をしてくれる。個人チャットで参加申請を出すことでゲームに参加でき、トークルームにbotを招待してゲーム開始のコマンドを発言するとゲームが開始する。その後は、botの指示に従って個別トークとグループトークを行き来しながら、ゲームを進行できる。

「OneNightWerewolf Bot」
「OneNightWerewolf Bot」

IoT/Beacon部門賞「雪山bot」(LINE ID:@hlk9118m)

 LINEグループに雪山Botを参加させると、スキー場で仲間がどこにいるのか把握できる。リフト乗り場を通過したら、そこに設置されたLINE Beaconと反応し、自分がどこにいるのかを自動的にグループチャットに投稿する。リフト降り場やレストラン、喫煙所、迂回コースなど、さまざまな箇所にLINE Beaconを設置することで、寒い雪山で手袋を外さなくても居場所を仲間に伝えられるようになる。

「雪山bot」
「雪山bot」

グループトーク部門賞「Checkun」(LINE ID:@rfy8689j)

 Checkunは、グループ旅行などの面倒な精算作業を助けてくれるbot。グループチャットにCheckunのbotを追加し、手入力やレシート撮影で支払内容を登録することで、それぞれのメンバーが支払う金額を知らせることができる。現在は、帰りの車内など対面での支払いを想定しているが、将来的には「paymo」のような割り勘の決済機能も搭載したいとしている。

「Checkun」
「Checkun」

対話エンジン部門賞「botnoi」(LINE ID:@botnoi)

 botnoiは友だちのようなフレンドリーなやりとりができる対話型のチャットボット。タイからのエントリー作品で、すでに約35万人の友だちがいるという。1対1のやりとりのほかグループ内でのコミュニケーションも可能。翻訳機能を搭載しており、タイ語、英語、ネパール語、中国語の4カ国語に対応できる。そのほか、レストランなどの周辺検索やアンケート機能などを搭載している。

「botnoi」
「botnoi」

GEEK部門賞「シャクレ」(LINE ID:@zhc1140s)

 イベントなどでの写真共有に特化したbot。LINE Beaconが設置された空間で、このアカウントに対して写真を投稿したり、管理者がスライドなどの写真を送信したりすると、会場内の人に即座に写真が共有される。スライドはリアルタイムに共有されるため、文字が小さいスライドも拡大して閲覧するなど講演に集中できるとしている。管理者モードではビデオカメラからのキャプチャも可能なため、機材構成次第ではスライド自体を講演者からもらわなくても画像化し共有できるという。テキストも送信できるため、英語の講演のリアルタイム通訳などにも使えるとしている。

「シャクレ」
「シャクレ」

 イベントの表彰式後に挨拶した砂金氏は、LINE BOT AWARDSにエントリーした個人に対して、アワード終了後もPush APIを無償提供することを発表。また、具体的な名称は避けながらも、次回は「音声コミュニケーション」をテーマにしたアワードも開催したいと展望を語った。同社は3月2日にクラウドAIプラットフォーム「Clova(クローバ)」を発表し、スマートスピーカ「WAVE」を初夏に発売することを明らかにしている。AIや音声認識の領域でも、開発者を巻き込んだ活動は広がりを見せそうだ。


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