私たちの生活には、Facebookがまだ入り込んでいない領域がいくつかある。だが、触手はそこにも伸びている。
Facebookは、コンピュータの画像を現実世界に重ねる新種のアプリの開発に取り組んでいる。このアプリでは、ユーザーがスマートフォンをかざしてカメラを起動すると、それまで何もなかった空間にバーチャルな合図やアート、さらにはゲームも追加することができる。
このテクノロジは拡張現実(AR)と呼ばれる。Facebookによると、拡張現実は、コンピュータの操作の仕方を変える取り組みにおける、新たな一歩だという。将来、私たちはこのテクノロジを使って、無地の壁にテレビを投影して視聴したり、何もない部屋にバーチャルな家具を置いたりするようになるだろう。
しかし、現在のところ、このテクノロジはカメラ用の安っぽいグラフィックスのように見える。ジョギングを終えたばかりなら、バーチャルなヘッドバンドと地図、額から流れ落ちる汗が重なった写真を撮ることができる。病院で待たされているときは、テーブルの上を片付けて、スマートフォンをかざすと映し出されるゲームを始めるといった具合だ。
Facebookの最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏は米国時間4月18日、同社の年次ソフトウェア開発者会議で、次のように語った。「われわれは、現実世界をオンラインで拡張することに注力している。拡張現実が、デジタルの世界と現実の世界を新たな方法で融合する助けとなってくれるだろう」
Zuckerberg氏はこの動きについて、メガネやコンタクトレンズなどのアイテムを通してコンピュータ化された世界を見る、という未来に向けた一連のステップの第一歩と考えている。このような未来では、画面を見たり、スマートフォンを取り出したりしなくても、あらゆる情報を入手できる。
Facebookは、拡張現実の世界への進出に熱意を表している数多くの企業の1つにすぎない。Microsoftは以前からこのテクノロジに言及しており、それは「HoloLens」という形で具現化されている。2016年、「Pokemon GO」が瞬く間に大ヒットしたのは、ARによるところが大きい。また、「Snapchat」のフィルタのおかげで、大勢のユーザーが既にARの利点をよく理解している。AppleのCEOであるTim Cook氏までもが、ARに熱意を示している。
しかし、最終的にこうした世界を実現するのがFacebookなのかどうかは、疑問が残る。世界最大の企業の1つとしての地位を自覚するようになった同社にとって、ARは新たな取り組みだ。現在、Facebookに最低でも月に1回はログオンするユーザー数は、20億人(全世界のオンライン人口の半分以上)に迫っている。
これまでのところ、その影響力により、Facebookは政治的な反体制者や抗議運動、コミュニティーグループ、アーティストによく利用されるプラットフォームになっている。しかし、同社は偽ニュース記事の増加など、物議を醸すさまざまな問題にも直面している。偽ニュースが共有され、話題になることがあまりにも増えたため、Facebookが2016年の米大統領選挙の結果に図らずも影響を及ぼしたと、一部の政治家が主張し始めたほどだ。
「Facebook Live」も大きな反響を呼んでいる。Facebook Liveを利用して、殺人や性的暴行、拷問といった現場の映像がユーザーのニュースフィードにライブ配信された。Facebookの開発者会議が開幕するわずか数日前にも、クリーブランドの男性が74歳のRobert Godwinさんを殺害する様子を撮影し、その動画をアップロードした(被害者は無差別に選ばれたようだ)。Zuckerberg氏は講演の中で、この痛ましい事件に言及し、このような悲劇を防止するためにやらなければならないことがあると考えている、と述べた。
さらに、「フィルターバブル」の問題もある。これは、Facebookのアルゴリズムがユーザーの関心のあることを表示するように設計されているため、皆が自分と同じように考えているとユーザーが思い込んでしまう現象だ。
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