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プレミアムインタビュー

日本中の知を集積--福岡・高島市長がITで起こす“化学反応”(後編)

山川晶之 (編集部) 渡徳博(カメラマン)2017年03月30日 08時00分
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 積極的なIT活用や手厚いスタートアップ支援策など、先進的な取り組みを矢継ぎ早に展開する福岡市。その取組みを引っ張っているのが同市長の高島宗一郎氏だ。今回、高島氏にインタビューし、福岡市における取り組みや狙いなどを前後編に分けてお届けする。

 インタビューの前編では、市政にITを積極的に取り入れる理由や、スタートアップが実現する「持続可能な社会」について話を伺った。後編では、福岡市が取り組む新しい試みや、日本が陥りやすいジレンマとその解決法のほか、博多駅前陥没事故などで注目を浴びたSNSの活用方法などについて聞いた。

福岡市全域に「IoTネットワーク」を整備

――福岡市が手がける新しい取り組みを教えてください。

 2017年7月頃より、福岡市広域でIoT向けの通信網である「LPWAネットワーク」の環境整備を開始します。LPWAとしては日本最大規模となり、日本中のIoTプレーヤーがLPWAネットワークを利用したサービスを提供できるようになるのです。29年度中には福岡市ほぼ全域をカバーする予定です。

 これにより、市全体で人の動きを把握できますし、畑の水分量や子ども・高齢者の見守りなど、LPWAネットワークに繋がったセンサからの情報を、すべて取得できるようになります。小さなエリアでの実証実験と異なり、都市全体を実証実験フィールドとして活用できるので、これからIoTの分野に関しては、福岡は一歩先を行くことになります。

 ただし、今回のIoTネットワークの取り組みは、残念ながらヨーロッパをはじめ海外の方が進んでいます。IoT分野は、世界的に市場が急速に拡大することは明白であり、技適や電波法の規制緩和も福岡市から言及したものの、日本は電波法が厳しく、交渉のハードルはとても高かったです。

 福岡市は、海外ネットワーク強化のため、エストニアの政府機関、ヘルシンキ市、台北市などと提携しています。海外では、デバイスの種類からはじまり、どういう情報を、どう解析して、どういったインターフェースでユーザーにアウトプットするのかまで、一貫して取り組んでいる地域が多くあります。こうしたネットワークを生かし、コラボレーションを仕掛けていますので、具体的な話として早く発表したいですね。

――市内全域のIoTネットワークですが、これは自動運転にも使われるものでしょうか。

 自動運転では、大量のデータをリアルタイムで処理することが必要だと思いますので、LPWAではない別の通信技術になると考えています。一方、自動運転に関しては、福岡市ではNTTドコモ、DeNA、九州大学とスマートモビリティ推進コンソーシアムを立ち上げて、プロジェクトに取り組んでいます。実際に自動運転車両も九州大学の敷地内で走っています。

 また、箱崎(福岡市東区の町名、九州大学箱崎キャンパスがある)をあらゆるイノベーションを組み込んだ街にする計画も動いていて、ここは今後、世界から相当注目される場所になると思いますよ。


2016年12月には、福岡市、NDDドコモ、DeNA、九州大学の4者で、自動運転に関する実証実験を開始している

――IoTをはじめとする新しいテクノロジを取り入れて、市政として還元し、スタートアップに育んでもらうと。

 そういう環境が日本中にないのです。実証実験できるフィールドを行政が作ることで、どのような事業者でも簡単に参入できるようになります。実証実験はエラーの洗い出しですので、それによって成功の確率が高まり、その結果を見たチャレンジャーがさらに福岡に集まる。さまざまなジャンルのチャレンジャーが集まると“化学反応”が起きます。これが非常に大事で、ここでまた新しい価値が生まれ、成長が早まります。

 さらに、化学反応の象徴的な施設として、旧大名小学校(福岡市中央区)に、福岡市内のインキュベート施設とスタートアップカフェを集積した施設を4月にオープンさせます。都心の“スーパーど真ん中”に、さまざまなスタートアップや大企業の新規事業が入居する予定です。


旧大名小学校跡地をスタートアップ施設としてよみがえらせる

 また、福岡における産学官の成長戦略の策定から実行まで、一貫したプラットフォームを提供するFukuoka D.C.(福岡地域戦略推進協議会)という組織も入ります。福岡にどんなチャレンジャーが集まっているのか、化学反応も含めて可視化されます。新年度は、福岡のスタートアップから、さらに目を離せなくなりますよ。

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