高森氏は働く喜びを実感するには、「Clear(自分の持ち味ややりたいことを自覚すること)」を軸として、「Choice(持ち味を生かせる仕事・職場を選択すること)」と「Communication(上司や同僚と密なコミュニケーションを生み出すこと)」が必要だとした。
「Clear、Choice、Communicationという3つのCによって働く喜びを実現させ、”悲しみの谷”の克服につなげていく。そのためにデータに基づいて人材をマネジメントするEvidence-Based HRMが大切になる」(高森氏)
こうした高森氏の課題整理を受けて、鹿内氏はデータサイエンスの立場から、大田氏はエンジニアリングの立場から実際に行われた研究開発の実例を披露した。
まず、Evidence-Based HRMの基礎となるデータについて、鹿内氏は社内会議というコミュニケーションに着目したという。働く個人にまつわるデータには、社内調査や社内アンケート、業績査定や行動評価、性格検査や健康診断などさまざまなものがあるが、なぜ鹿内氏は会議データに着目したのか。
それは日々のコミュニケーションの一つである会議というデータには、無自覚的なものが多く含まれるからなのだという。無自覚的な会議のデータというと、個々の会議での発言内容や反応を思い浮かべる方も多いだろうが、日々の会議により生まれている人と人とのつながりのデータに、働く喜びに関する情報があると考えた点も新しい試みである。
では、会議のデータとはどういうものなのか。わかりやすいところでは、時間と場所といったカレンダーに記載されている情報があるが、それ以外にも会議を誰が招集したのか(オーナーシップは誰か)、会議には誰を招集したのか(誰が仲間に貢献しているのか)といったデータも含まれている。鹿内氏が注目したのは、このオーナーシップと貢献のバランスだ。
例えば、ある人はさまざまな人から会議に招集され、仲間への貢献を求められたとする。もちろんこれ自体は悪いことではないが、自分自身がオーナーシップを持って仕事をリードすることが少ないために自分の仕事の軸になるものが見えず、また自分の仕事を進めるためには誰とコミュニケーションを取るべきかがわからない状態に陥ってしまう可能性もある。
組織には十分に貢献していても、自分からやりたい仕事を推し進めていくという前向きな姿勢が生まれていなければ、モチベーションが低下する可能性がある。逆に言えば、自分の仕事を進める上でそれを支援してくれる仲間が一人でも生まれれば、仕事に対する姿勢が一変することも期待できるかもしれない。
「データから、会議のオーナーシップをとることで、仕事に軸ができて周囲との連携が活発になるということがわかった。こうした会議データだけに着目しても有益な気付きが得られることで、組織のマネージャーが適切なアドバイスができるようになるだろう。こうした気づきを誰でも得ることができ自分で働き方を変えることができるツールを目指していきたい」(大田氏)
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