2月21日と22日の2日間に渡り、本誌主催のイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」を開催した。人工知能、機械学習、ディープラーニングといった言葉を耳にしない日はないほど、AIにまつわるキーワードがあふれている昨今、それらがビジネスにどのような影響を与え、あるいはビジネスでどう役立つのか。実際にAIを活用している各社の見解や取り組みを知ることで、AIの将来性や自社事業への導入の可能性も見えてくるだろう。
イベントの初日は、JR東日本の横山淳氏が基調講演のトップバッターとして登壇。「IoT×AIで実現するJR東日本の技術イノベーション」と題して、2016年11月に発表した同社の「技術革新中長期ビジョン」の中身と狙いを詳しく解説した。また、鉄道事業におけるAI/IoTを活用した現在の具体的な取り組みの内容と、将来の見通しについても語った。
国鉄の民営化によりJRが発足してから30年目の節目になるという2017年。くしくも明治維新からちょうど150年というタイミングでもあり、JR東日本の横山氏は、今回テーマとなっているAI/IoTが「おそらく明治維新に匹敵する変化を実現するのではないか」と切り出した。
鉄道事業という主に国内の利用者をターゲットとしたビジネスだけに、そのビジネス環境の変化として最も大きなものは、人口の減少だ。横山氏いわく、戦前戦後の「輸送力増強」を旗頭に「人口の増加とともに鉄道が発展してきた」ものの、今度は反対に、人口の減少とともに鉄道は衰退の危機に怯えかねない時期にきている。「人口減少時代を迎え、鉄道はどうあるべきか」が今や最大の課題なのだ。
そこでJR東日本が掲げたメッセージが、「IoT、ビッグデータ、AI等により“モビリティ革命”を実現する」というもの。テクノロジを活用して、公共交通機関としてさらなる「安全・安心」に取り組むのはもちろんのこと、「エネルギー・環境」面では消費電力量の低減など環境保護への貢献を推し進め、鉄道のソフト面とハード面に当たる「サービス&マーケティング」や「オペレーション&メンテナンス」といった分野での変革をも目指す。これら4分野は、同社の技術革新中長期ビジョンの柱だ。
“モビリティ革命”の発想の根幹にあるのは、IoTやビッグデータ、AIなどの急速な展開だ。これまでは主に距離・時間・手間によって自動車、鉄道、飛行機という3つの移動手段が共存してきた。しかし、とりわけAI技術の採用が日進月歩で進みつつある自動車は、従来「所有して運転しなければならない」ものだったのが、技術進化によってカーシェアや自動運転が現実となり、「所有せず運転しなくてもよい」ものになりつつある。「クルマがこれだけ変化するとなると、列車をダイヤ通りに走らせるだけでは、鉄道はサービス業としては遅れたものになる」と横山氏は見ているわけだ。
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