CNET Japan Live 2017

人口減少時代を迎えた鉄道の未来--IoT×AIで実現するJR東日本の技術イノベーション - (page 2)

「危険を予測してリスクを最小化する」時代に

 では、AI/IoTは技術革新中長期ビジョンの柱である4分野それぞれで、どのようにかかわってくるのだろうか。

4分野のうち何よりもまず「安全・安心」が優先されると語った横山氏
4分野のうち何よりもまず「安全・安心」が優先されると語った横山氏

 まず「安全・安心」については、「常にトッププライオリティ」と位置付け、さまざまな面でのリスク低減を目指す。従来は「過去のいろいろな事故・トラブル・失敗から学ぶ」という手法だったが、これからのAI/IoT時代は、センシング技術を用いることで「危険を予測してリスクを最小化する」という手法に変わる。

AIとIoTを駆使し、危険を予測してリスクを最小化する
AIとIoTを駆使し、危険を予測してリスクを最小化する

 たとえば、過去にあった夏場にレールが曲がるというトラブルの多くは、レールが枕木に固定されているため暑さで歪みが溜まり、限界を超えたときに一気に座屈するのが原因だった。これを防止するため、枕木周囲の砂利を締め、特に夏場はその砂利に触れないというルールを設けたものの、工事が必要になった時はこのルールが障害となっていた。また、全線をまんべんなく同じように確認・対策できるわけではないので、トラブルの発生を防ぐのは困難だった。

 ところが最近では、通常の営業列車にモニタリング装置を搭載してセンシングすることで、乗客を運びながら毎日、常に線路の微細な変化を捉えられるようになった。これにより、トラブル発生前に予兆を捉え、適切に処理することが可能だという。

レールの座屈の問題について、従来はある意味「何もしない」という消極的な対策しか取れなかったが、IoT技術によってプロアクティブに対応できるようになった
レールの座屈の問題について、従来はある意味「何もしない」という消極的な対策しか取れなかったが、IoT技術によってプロアクティブに対応できるようになった

まったく揺れない新幹線が登場か

 「サービス&マーケティング」については、テクノロジの活用で「シチュエーションに応じたサービスと情報を提供する」ことを目指し、駅間移動のみに止めず、ドア・ツー・ドアサービスへの拡大を図るとした。レール上しか走れない列車だけに、これまで駅から先の二次交通は研究開発の範囲外としていたが、それでも「お客さまの本当のニーズはドア・ツー・ドア」であると横山氏。「たとえば仙台駅で新幹線を降りた後、秋保温泉に行きたい人、荷物の大きい人、高齢者のお客さまに対してクルマを自動的に手配するなど、徹底的に顧客目線で考えないと、モビリティとして洗練されているとは言いがたい」と話す。

AIによってニーズに応じた情報提供、フレキシブルな列車運行を可能にする
AIによってニーズに応じた情報提供、フレキシブルな列車運行を可能にする

 サービス面では、混雑時の運行方法も課題の1つだ。ダイヤ通りの運行が最善としてきた従来の考え方では、異常時も平常時とキャパシティは変わらないため、混雑に拍車をかけることがある。しかしIoT×AIの力を借りることで、混雑する時とそうでない時を予測して車両の編成を変えたり混雑が続きそうな場合は列車を増発したりするなど、柔軟な対応が可能になる。

他の交通機関との積極的な融合などを進めていく
他の交通機関との積極的な融合などを進めていく

 また、横山氏は2030年に札幌まで延伸する北海道新幹線も引き合いに出す。今のところ東京~札幌間の片道の移動時間は5時間程度と予想しており、飛行機を利用する人の方が圧倒的に多いと考えられる。しかし横山氏は、新幹線は「まとまった5時間」を強みにできるとする。出張するビジネスマン向けにはテレビ会議もできるオフィス風の座席にしたり、ゆっくり過ごしたい人には映画を見たり食事がとれるようにしたり、家族旅行する人にはパーティもできるような座席にしたりなど、「長時間移動の空間を価値あるものにすれば、乗ってくれる人が増えるのではないか」と横山氏は見ている。

 最新のアクティブサスペンションにより、「まったく揺れない、カクテルをなみなみと注いでもこぼれない史上最高の新幹線を作れる」ことや、乗客が多く乗ると予想される駅に着く前に空調を稼働させ、車内温度を快適に保つ電車の構想も明かした。

東京~札幌間の「まとまった5時間」を価値ある空間にして提供することで利用者数を増やしたい考え
東京~札幌間の「まとまった5時間」を価値ある空間にして提供することで利用者数を増やしたい考え

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