アクティブコアが辿ってきたデータマーケティング進化の歴史--山田社長

別井貴志 (編集部) 井口裕右2017年03月03日 12時02分
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 昨今、顧客に合わせてパーソナルなマーケティングを実現するマーケティングオートメーションや、カスタマージャーニーを追いかけるアトリビューション分析などを実現する数多くのソリューション製品が、デジタルマーケティング業界を賑わしている。それら製品の多くはそれぞれの機能に特化した形で開発、提供されているが、アクティブコアが提供する「アクティブコアマーケティングクラウド」は、それら製品とは一線を画す開発を辿っているという。

 アクティブコアの代表取締役社長である山田賢治氏に、創業からアクティブコアマーケティングクラウドが誕生するまでの経緯を聞くと、ウェブ解析製品で創業したアクティブコアが、データマーケティングの歴史と向き合い、製品を進化させてきたことがわかった。

“データドリブン時代”の前夜に起業したアクティブコア

――まずはアクティブコアを起業したきっかけを教えてください。

アクティブコアの代表取締役社長である山田賢治氏 アクティブコアの代表取締役社長である山田賢治氏

山田氏:起業前はエンジニアとして外資系ソフトウェアベンダー製品の日本導入を支援する業務や、米国の拠点で製品開発をする業務などに携わっていました。海外での業務を終えて日本に帰ってきて、また海外で開発された製品の国内導入に携わったのですが、その頃から「やはり(海外製品の販売代理ではなく)自社で商品を持たなければ」という思いが強くなったのです。

 ちょうどその頃(2000年頃)からLinuxやオープンソース、PCサーバが業界に浸透してきたということもあり、莫大なコストを掛けなくても自社製品を構築してビジネスができるのではないかと考え、当時の仲間と共に2005年に創業しました。

――もともと起業意欲が強かったのですか。

山田氏:もともとは、そんなに強くなかったですね。若い頃はまったく考えていませんでした。きっかけは、米国のR&D部門で製品開発に携わった経験です。ソフトウェア製品の機能などコアな部分を作りこめる楽しさを経験したことが、大きな転機となりました。日本に帰ってきたあとは、UNIXやWindows Serverをベースにしたデータウェアハウスやデータマイニングといった領域の新規事業に携わったのですが、そのときにはエンジニアとしての業務だけでなく、営業や顧客へのプレゼンテーションなども経験し、昇格して企業経営の仕組みやファイナンス業務の仕組みなども経験するようになります。そうやっていくうちに、自然とビジネスの仕組みや全体像を理解できるようになり、そうした経験が起業を決意する土台となったのではないかと思います。

――そうして2005年にアクティブコアを起業されたわけですが、なぜウェブ解析の領域からビジネスを始めたのでしょうか。

山田氏:当時データウェアハウスの事業に携わっていたというバックグラウンドがあったことも大きいですが、正直に申し上げると、ウェブ解析が一番“手っ取り早かった”ということではないでしょうか。というのは、当時は基幹系の大型システム開発などはベンチャー企業が手を出せるような領域ではなかったのです。一方で、ウェブ系のアクセス解析技術は、当時はまだ生のサーバログデータを収集するところくらいまでで、業界内でも注目が高くありませんでした。オムニチュアも上陸するか否かと言われた時期で、GoogleもUrchin(アーチン:Google Analyticsの前身)を買収した頃。競争がこれから始まるというタイミングの良さがあったのです。

 当時の私は、アクセス解析は将来的には購買データや顧客データを統合したものへと進化し、分析だけではなくアウトプットのパーソナライズなど具体的なアクションへと連携できなければだめだという構想を持っていました。しかしその頃は、まだ技術的にできないこともあったため、まずは短期間で製品としてビジネス展開できるものとして、収集したアクセスログをブラウザに表示して視覚化するというウェブ解析製品からスタートしたのです。

 最初は縁のある企業に導入してもらったり、飛び込み営業をしたりして顧客を開拓しました。クラウドASP製品として展開したいという構想は持っていたのですが、当時は自分の貯金で資本金を作って少人数でビジネスをスタートしたので、データセンタに膨大なサーバを借りることは難しく、顧客にサーバを用意してもらいソフトウェアを導入させてもらうオンプレミス型の製品として提供していました。その後、あるホスティング企業の協力でデータセンターにソフトウェアを置けるようになり、顧客にはタグを設置してアクセス解析ができるASP型製品の基礎を作れました。創業2年目の終わりくらいのことです。

顧客ニーズに応えて生み出された2つのブレイクスルー

――その後、製品やビジネスはどのように成長していったのでしょうか。

山田氏:その頃は、ロックオンやオプトをはじめとしてネット広告効果の測定技術が盛り上がり始めた時期で、ログ解析だけでなく広告効果測定に対するニーズが増え始めてきました。ウェブ解析も広告解析もタグを設置することで実現できるという共通点があり、ウェブ解析をメインとしながらも広告効果測定のツールや代理店向けの機能を盛り込むようになりました。広告会社なども取引先として拡大していき、そこが最初のブレイクスルーになりましたね。取引の拡大に伴ってサーバも自分たちで専用のものを用意し、通信回線も増強しました。

 そうして、製品やビジネスが拡大したことで、次のステップとしてウェブ表示を広告やキーワード、IPアドレスから推定されるユーザーの位置情報などに応じてウェブや広告の表示をパーソナライズする領域に進みました。そうした技術は当時はLPO(Landing Page Optimize)と呼ばれていたのですが、設置するタグにLPOの技術も盛り込み、ウェブ解析、広告効果測定、LPOをパッケージで提供できるようにしたのです。

――LPOに進出した2008年頃はアドテクノロジ領域の競合企業も多かったのではないでしょうか。どのような点に競合優位性を持たせたのでしょうか。

山田氏:その当時の強みは、今アトリビューション分析と呼ばれるカスタマージャーニーの可視化を日本でいち早く始めていたことではないでしょうか。当時は「ポストクリック」とか「ポストインプレッション」と呼ばれていましたが、私たちの製品は広告だけでなく検索キーワードからの自然流入なども解析することができたり、LPOで顧客の来訪履歴を保持して(広告以外の)再来訪にも最適化を適用する技術などを搭載していたので、広告からの直接的な効果以外の顧客の動きを可視化したいというニーズを持った広告会社や広告主には大変好評でした。また、レポート機能を顧客ニーズに合わせて自由に設定できる点も評価が高かったですね。私たちのレポートと、広告掲載メディアのレポートでデータに相違が生まれてしまうという課題もありましたが(笑)。

 その後の大きな転機としては、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)への対応がありましたね。これも顧客ニーズから生まれたものです。その顧客はある通販会社で、あらゆる効果測定ツールを導入しているような企業だったのですが、ある日「モバイルとPCで効果測定を一本化できるのであれば、アクティブコアの製品を導入したい」と言われたのです。そこでガラケーへの対応を決めたのですが、ガラケーはユニークなIDがキャリアで異なったり、JavaScriptを使えないなど技術的な難しさがありました。何とか技術的なハードルをクリアしてテスト導入に持ち込めましたが、これをきっかけにモバイル通販サイトなどを運営する企業には一気に普及していきましたね。

 アクセス解析からはじまり、広告・LPO領域に拡大し、その後コマース事業の領域に顧客を拡大していけて、これが第2のブレイクスルーと言えるかもしれません。コマース向けのレポート機能では、税込、税抜で表示を変えたり、商品の売上分析や顧客の購買行動分析ができる機能などを盛り込みました。これによりビジネス領域は一気に広がったと言えるのではないかと思います。

――こうしたコマース向けの機能拡充がレコメンド機能を生み出したということでしょうか。

山田氏:そうですね。コマース解析は売上データが蓄積されていきますので、それを使わない手はないわけです。当時の日本のアドテクノロジでは、広告効果測定もLPOもレコメンドも、全て別々の企業が特化型の製品を開発して提供していました。それに対して、私たちは広告の測定データも売上データも蓄積できる環境の中で、レコメンドエンジンを始めました。顧客としては、ひとつのタグでウェブ解析も、広告効果測定も、コマースデータの解析も、レコメンド機能の搭載も、統合的に実施できるのであれば、こんなに便利なことはないですよね。コマース企業の中にはモバイル対応ではなくレコメンド機能を盛り込みたいという顧客も多く、それをきっかけにビジネスをさらに拡大できました。

 これが4年ほど前のことですが、その間にソーシャルメディアのムーブメントが本格化して、FacebookやTwitterのAPIに対応したり、コマース企業向けにメールマガジン専用のレポート機能を追加したり、さまざまな機能を拡張していきました。そうしているうちに、ついにDMPの波がやってきたのです。

 創業時から、私たちはオンライン、オフラインのデータを統合的に分析するデータウェアハウスにレコメンドなどのアクション機能を組み合わせたプライベートDMPを生み出したいと考えてきましたので、このころから現在の「アクティブコアマーケティングクラウド」の原型となる製品を作っていきました。ウェブだけでなくPOSデータなど店舗のデータもIDで管理して、オンラインとオフラインを統合した売上分析や顧客分析を実現し、またオンラインとオフラインの両方を活用したレコメンドを可能にしたのです。2016年には、顧客へのメール配信の機能も搭載し、マーケティングオートメーションで求められる一連の機能が揃ってきました。

多忙を極める担当者の業務にテクノロジがどうサポートできるか

――お話を聞いていると、プロダクトアウトで製品を作りこんでいったのではなく、あくまでも顧客ニーズに合わせて機能を拡充した結果、今の「アクティブコアマーケティングクラウド」の原型に辿り着いたという印象があります。

山田氏:そうですね。ポストクリック、ポストインプレッションの分析も当初は盛り込む予定ではありませんでしたし、顧客からのニーズや海外のウェブ広告トレンドなどを踏まえて機能拡充していきました。フィーチャーフォン対応も、実は当初は考えていなかったのですが、顧客からの声に応える形で挑戦しました。もともと目標とする青写真はあったものの、「こういう機能の製品にしたい」と細かく決めていたわけではなかったというのが正直なところですね。

 アクティブコアは、顧客志向の製品をオールインワンで提供することで、データの分析からアクションまでを統合的に実現したいという考えで事業を推進しています。アクティブコアマーケティングクラウドに至るまでに辿ってきた道筋は、こうした姿勢の表れなのではないかと思います。

――では、今の顧客ニーズはどのように捉えているのでしょうか。例えばレポーティングやPDCAはリアルタイム性が求められており、消費者のウェブ利用環境はPCからスマホへと移行しました。

アクティブコアの代表取締役社長である山田賢治氏 部門ごとの業務の境目がなくなってくる中で、「効率的にわかりやすく効果を生み出したい、という共通のニーズが生まれてくることでしょう。そこにテクノロジが応えていく必要がある」と山田氏。

山田氏:社内における個々の業務の敷居がなくなってきていますよね。それぞれの業務に連動性が生まれています。ウェブ分析の部門と広告宣伝部門が連携したり、売上データをマーケティングに活用すると企業の基幹業務も関係してくるわけです。業態に関係なく、こうした動きはあらゆる企業のビジネスに見られるのではないでしょうか。部門ごとの業務の境目がなくなってくる、その過渡期にいるのではないかと思います。また、業務がシームレスになることで個々の担当者の仕事はますます複雑多岐に渡ってくるでしょう。そこを、効率化しながら売上を伸ばすためにはどうしたら良いのかという課題が生まれているわけです。

 こうした課題に対して、アドテクノロジはただデータを統合して見せるだけではなく、業務連携の流れを円滑にして効果を生み出せるプラットフォームとして機能しなければならないでしょう。これまでは、集計データを見られればよかったのですが、これからの時代はそれだけでは十分ではありません。シームレス化した社内の業務の流れは、どのような企業でも同じように変化していき、データ連携もそれに応じて同じような流れになっていきます。こうした変化に合わせて、「効率的にわかりやすく効果を生み出したい」という共通のニーズが生まれてくることでしょう。そこにテクノロジが応えていく必要があるのではないかと思います。

――重要なのは「統合」ではなく「連携」なのですね。データはどんどん多様化して蓄積されていきます。そしてそのデータの連携によって増加していく担当者の業務。それをAI(人工知能)がサポートする……。そんな時代が求められているのかもしれませんね。

山田氏:おっしゃる通りですね。人工知能をはじめとするテクノロジの進化に対する期待は非常に強く感じています。私たちもマーケティングオートメーションや、レコメンドエンジンなどで自動化されたマーケティング環境を提供していますが、例えばマーケティングオートメーションのシナリオ設計などでは人間によるジャッジメントは必要であるものの、機械が担当者の負担を軽減するためには何ができるかが、今後の大きなテーマになるかと思います。

――最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

山田氏:今後は機械学習やディープラーニングだけでなく、IoTやロボティクス、セキュリティや産業技術の領域で大きな社会の変革が生まれるのではないかと注目しています。私たちのマーケティング領域でもこうしたテクノロジの進化を取り入れながら、データ連携をさらに洗練させ、より使いやすくしていきたいと考えています。担当者の負担を軽減してくれる“かゆいところに手が届く”ような価値をAIが提供してくれる、そんな製品を目指したいですね。アクティブコアマーケティングクラウドはまだまだ完成系ではありません。これから更に進化していきます。

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