山田氏:血圧測定の数値をPepperで受け取り、Microsoft Azureにデータを送って蓄積していくところと、顔認証、自然言語解析を実装しました。
別井:AIにこれから学習を重ねていく段階だと思いますが、いま何割ぐらい達成されている状況ですか?
山田氏:正直まだ手探りな状態です。いつ人間と同じぐらい認識能力が高まるかわからないところがあります。顔認証はほぼ100%できますが、自然言語解析はデータのパターン認識が大変です。
まずは例題となる文章を考える必要がありますし、その派生も認識できるよう、少しずつ変化させるなど工夫も必要になってきます。実際に導入して話しかけてもらい、学習させていく作業がどうしても必要です。
阿部氏:音声認識に関しては、正直ハードウェア的な限界もあります。解析するために聞き取ったものをまずテキスト化していますが、そこを間違えると言語の解析もうまく進みません。そのテキスト化の精度が上がると、認識の精度もぐっと上がるはずです。
山田氏:どこからどこまでを聞き取らせるかという区切りの認識が難しいですね。聞き取った音声を独自に解析していかないとうまくいかない現実があります。
別井:先ほど利用者さんがPepperの手を握っておられましたが、今後もっとアクションを組み合わせる予定などはありますか?
木瀬氏:そうですね、皆さんよくPepperの手を握られます。そこはPepperの良い部分だと思います。Pepperに「握手しましょう」と声をかけてくださる利用者の方もよくいます。コミュニケーションは介護の一種でもあるので、今後はそれに対してリアクションができるように言語解析していただけるとレベルがもう1段階上がると思います。
別井:ユニアデックスさんはPepperとは別のIoTで館内の管理にかかわっているのでしょうか。
藤井氏:そうです。当社は「IoTスタートキット」の導入を担当しています。センサをデイサービスやトイレに設置して湿度のデータを調べたり、トイレの明るさを計ることで、トイレの利用回数を確認したりしています。これらのデータを解析することで、先日はトイレが部屋と比べて少し寒いことなどをご報告しました。数値を取って可視化することで気付きにつなげることができます。
例えば、将来的には血圧の測定データと館内・屋外の気温との関連性なども解析したいですね。IoTで、意外に数値にされるまで気がつかない、“こういう場所でこういうことが起こっている”という気付きにつなげたいと思っています。
別井:まだデータをこれから取っていく段階です。今回のプロジェクトのゴールはどこになるのでしょうか。
阿部氏:ゴールはありませんね。まだ導入したばかりですし。もっと改善し、スタッフの方の負荷を軽減して介護の質が良くなることを目指していますが、それも終わりがないものです。
別井:データはMicrosoft Azureにあり、今後開発で性能が上がっていくと考えられますが、ハードウェアとしてのPepperの性能は上がらない部分が難しい部分です。
木瀬氏:開発側から見るとPepperのハードウェア的な限界があるかもしれませんが、介護の現場からするとPepperのこの大きさと見た目はとても良いですね。この館内にはほかにも小型のロボットを導入していますが、やはりそれだと孫には見えない。Pepperはロボットの中でもちょっと違う存在感がありますから、この見た目のまま中身が進化していってほしいです。
例えばPepperと朝「おはよう」と握手したらバイタルチェックができると最高です。そんな未来がひとつのゴールかもしれません。人の業務を1時間減らしてくれるだけでロボットには大きな価値があります。
別井:やり続けていくと想定外の価値も出てくるかもしれませんね。
木瀬氏:そうですね、現在100人の入居者がいますが、部屋にはすべてセンサが取り付けられています。毎日その数値とナースコールの情報をMicrosoft Azureに保管していますが、今後はその解析によって何が見えるかに期待しています。
現場のスタッフが気がつかなかったことが見えてくることもあると思います。血圧や環境と事故の因果関係など、データ化することで見えるかもしれません。そこに価値が生まれる可能性はありますね。現場の負担軽減だけでなく、新たなサービスにもつながると思います。これからも現場のニーズを伝え続けて、開発に反映していってもらいたいと思います。
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