「その時計は電池が持つのか?」。筆者のApple Watch Series 2を見て、高級時計メーカー、ゼニスのCEOであるアルド・マガダ氏はそう尋ねてきた。
「私もApple Watchのファーストモデルは買ったよ。しかし3日で付けるのを止めた。電池がもたなかったからだ」。新型はもちますよ、と言うと、「それはいいね」と彼は答えた。
筆者がApple Watchを使うようになって、1年以上が経つ。その間さまざまな時計メーカーのCEOやエグゼクティブに会い、感想や印象を聞いてきた。意外だったのは、彼らの大半がApple Watchに対して好意的だったことだ。Apple Watchのリリース前とは、雰囲気が真逆である。ブルガリの時計部門で責任者を務めるグイド・テレーニ氏は、理由をこう説明した。
「Apple Watchのリリース前、スイスの時計関係者たちはナーバスだった。時計業界を侵食すると思っていたのだ。確かにApple Watchは売れたが、私たちはスイスの時計業界と共存できることを知った。スイスの時計業界に対する影響はほぼなかった、と私は考えている」。
卓越したプロダクトマネージャーであり、辣腕のビジネスパーソンであるテレーニ氏の分析は、スイス時計業界の関係者たちに共通したものだろう。あくまで個人的な感想だが、加えて言うと、関係者たちの多くはApple Watchがいっそう売れることを願っているようにさえ感じる。
9月に、そのApple WatchがApple Watch Series 2へと進化した。結論を先に言うと、ハードウェアとしてのApple WatchはSeries 2でついに完成をみた、といえる。防水性能が50m(!)となり、電池のもちは良くなり、反応は速くなり、画面は見やすくなった。使う上でのストレスはほぼなくなったと考えていいだろう。電池の容量を増やし、防水性能を高めたトレードオフとして厚みは増したが、装着感を損ねるほどではない。
1と2の違いを、マクロ・ミクロの視点から見ていこう。まずは前者から。ハードウェアとして完成したことにより、Appleはハードウェアとしての魅力を強いて謳う必要がなくなった。2の発表に従い、公式サイトを埋め尽くしていた詳細な説明は消え、代わりにライフスタイルに寄り添うApple Watchというイメージが強調された。その証拠に、公式サイトで目を惹くのは、精緻な外装を持つステンレスモデルではなく、軽くて使いやすいアルミモデルだ。
筆者はAppleの観察者ではないが、Appleの新製品には一定の法則があると思っている。ハードウェアが充実したらライフスタイルに振り、ライフスタイルを満たせる機能を十分に提供できないと判断した場合は、ハードウェアとしての魅力を強調する。2016年の新製品でいうと、前者はApple Watch Series 2であり、後者は新iPhone 7とiPhone 7 Plus、そしてApple Watchのファーストモデルだろう。詳細な説明が省かれた公式サイトを見る限り、Appleは、Apple Watchがハードウェアとして完成したと判断したのだろう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」