「目は口ほどにものを言う」――この言葉をマーケティングで実践しているのが、トビー・テクノロジーが提供するアイトラッキングだ。“視線”の動き、停止する時間、回数、スピードを計測し、何を見ているのか、どんなものに惹かれているのかを分析。その精度は「無意識のニーズを浮かび上がらせる、唯一無二のマーケティングツール」と言う。
従来のマーケティングツールでは表面にあらわれては来ない、深層心理を導き出すアイトラッキングの今後のマーケティングはどんなものなのかを、トビーでアイトラッキングによる学術調査やマーケティングなどを手掛けるリサーチカンパニー(Tobii Pro)のプレジデントであるTom Englund(トム・イングランド)氏に聞いた。
2001年に創業したアイトラッキングのリーディングカンパニーです。心理学、医学、工学などの学術分野で利用されているほか、パッケージデザインの改善や店舗内の構造などを視線の動きから分析するマーケティングツールとして広く使われています。スウェーデンに本社がありますが、日本をはじめ、世界中に顧客を持っています。
私が担当するTobii Proは、福祉カンパニー(Tobii Dynavox)、インターフェースカンパニー(Tobii Tech)と3つあるカンパニーの1つです。営業所は世界14カ所に展開しており、その中でも日本は重要な市場に位置づけています。
日本市場は、セールスの大きな部分を占めていることが1つ。もう1つは新たな用途として取り組んでいる「技能伝承」において、日本が特に優れているからです。
技能伝承は、経験者の視線を記録し、伝えることで、未経験者へのトレーニングとして利用するもの。日本は品質管理やもの作りに優れていますから、この分野における必要性は特に高いと感じています。
実際に、日本のお客様で品質管理のテストがうまくいかないという事例がありました。研修をしても検査後に欠陥が見つかるケースが出ていたのですが、アイトラッキングを使用することで、熟練者がどこに注目しているのか、見ている順番はどうなのかを可視化することによって、品質保証の問題を解決しました。
今まで可視化できなかったものを、きちんと見せることによって物事がよりわかりやすく伝わる。これはアイトラッキングの最大の強みだと思っています。
モニタにアイトラッカーを装着した「Tobii Pro TX300」や、モニタに後から装着ができるスリムな「Tobii Pro X2」、さらにウェアラブル型の「Tobii Pro Glasses 2」などのハードウェアで視線を計測し、計測したデータをトビー専用の解析ソフトウェアで解析することで、アイトラッキングができます。
今までは、アイトラッキングが搭載されたモニタなどが必要でしたが、ウェアラブル型を用意することで、自由度が広がりました。視線の動きは画像として保存され、ハードによって1秒間に取得できる枚数が異なります。最新の「Tobii Pro スペクトラム」は1秒間に600枚の画像を記録できる高性能モデルで、これは従来モデルの約10倍にあたります。高性能モデルではより細やかな眼球の動きを計測できるため、視線の停留から停留までの非常にスピードの速い視線移動も記録できます。ここまで精度をもとめるのは大学などの研究機関が多いです。
ウェブサイトのユーザーインターフェース改善や広告のクリックなどを見る場合はモニタ一体型、店頭内や棚割りなどを調査する際は動きまわる必要がありますからウェアラブル型が使用されます。
実際に視線の動きを計測してみると、人はどのように商品を選択し、決定しているのかがわかります。店頭においては、商品が見つけやすかったのか、どこに注目しているのかも知ることができる。1つの商品においては、もっとも注目した点を割り出すことで、その商品の売りとなるポイントが見えてきます。
使い方はそれぞれですが、食品、飲料メーカーで特に多いのはパッケージについてですね。店頭に並んだ時、どんなパッケージがベストなのかを知るために使われるケースが多いです。
状況によって異なることもあるでしょう。そうしたことも考慮して、調査したい項目を明確にしておくことは必要です。また調査に参加していただく方をきちんと識別していくことも重要で、例えば、調査するブランドを知っているかいないかによって、認識方法は異なります。こうした事前の調査をしっかりやることで、精度は保たれます。
ただ、最近はネットショッピングの登場により販売チャネルが多様化し、マーケティング方法は変わりつつあります。ネットで商品を選択して、店頭で購入するという行動が増えきました。こうした変化をきちんと捉え、ターゲットを明確にしてマーケティングに取り組むことが必要になっています。
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