ソフトバンクは11月24日、IoTに向けたLTEの規格の1つ「NB-IoT」を用いた、屋外での実証実験を千葉県の幕張メッセで実施。導入の経緯について説明するとともに、パーキングでのIoT機器利用をイメージした、NB-IoTの実証実験の様子を公開した。
ソフトバンクの技術統括 モバイル技術本部 ネットワーク企画統括部 統括部長である北原秀文氏は、NB-IoTを導入するに至った経緯を説明。同社では現在、2020年頃の導入が予定される次世代通信方式「5G」の本格的な普及に向け、その要素技術を先取りして導入する「5G Project」を進めている。
実際ソフトバンクは9月に、多数のアンテナ素子とビームフォーミング技術を用いることで通信容量を高める、5Gの要素技術の1つとなるアンテナ技術「Massive MIMO」を、傘下のWireless City PlanningのAXGPネットワークに導入している。これは月額6000円で20Gバイトの通信容量が利用できる「ギガモンスター」の導入に合わせ、モバイルでの通信が一層増大する今後を見越して導入したものである。
ただし、北原氏は大容量通信以外にも、モバイルネットワークの利用には大きな変化が起きつつあると説明。それがIoTの広まりであり、今後はスマートフォンやタブレットなどに限らない、多種多様なデバイスがインターネットに接続するようになると見られている。
しかも、IoT対応デバイスの増加によって、2015年から6年後には、モバイルネットワークの接続数が2倍に上るほか、2035年には全世界で1兆個を超えるデバイスが、インターネットに接続する可能性があると北原氏は語る。そうしたIoTの時代を迎えた時、基地局1つ当たり接続数が1000デバイスに限られる、現在のLTE対応基地局の性能では容量不足となってしまうことから、IoT時代に向けより多くの機器を接続可能なネットワークが必要になると、北原氏は話している。
その一方で、IoTに求められるネットワークには、3つの重要な条件を満たすことが必要だとも話している。1つ目はあらゆるモノに通信モジュールを導入するため、モジュールのコストを5~10ドル程度に抑えること。2つ目はバッテリが10年以上持続し、メンテナンス不要な環境を実現できること。そして3つ目はエリアで、IoTでは人がいない場所でも通信がなされるケースがあることから、屋内外の広いカバレッジが求められることだ。
そうした環境を実現するため、ソフトバンクでは低速だが多くのデバイスを同時接続できる、IoT時代に対応したLTEの通信規格を導入するとのこと。具体的には、通信速度が下り10Mbpsと比較的速い「カテゴリ1」(Cat.1)、通信速度が1Mbpsで、カテゴリ1より多くのデバイスを接続できる「カテゴリM」(Cat.M)、そして通信速度は数十kbpsと非常に低速だが、より多くの機器を同時に接続でき、一層の低消費電力を実現する「NB-IoT」の3つの規格を、2017年夏より導入していくとのこと。広いエリアをカバーするため既存の900MHz、2.1GHz帯の基地局をベースとし、日本全国での展開を進めていくという。
ソフトバンクでは、LTEをベースとしたこれら3つの通信規格をメインとして用いながら、建物内やインターネット接続が不要な箇所などを、「LoRa」などライセンス不要な周波数帯で展開できる通信規格によって補完し、IoTに適したネットワークを作り上げていくとのこと。将来的には、1兆デバイスを超えるIoTの基盤を支えるプラットフォームを作り上げたいと、北原氏は話す。
続いて、NB-IoTを用いた実証実験の内容を、モバイル技術本部 ネットワーク企画統括部 技術戦略推進部 企画推進課の影井宏行氏が説明した。影井氏によると、今回は自動車のパーキングにNB-IoTを用いた、「スマートパーキング」を想定した実証実験を実施しているとのこと。通常のコインパーキングでは、フラッパーを用いたアナログな仕組みが用いられているが、今回の実験では金属センサなどを備えた専用のIoT機器をパーキングに設置し、そこからNB-IoT経由で情報をクラウドに通知することで、駐車状況の確認や課金など、パーキングビジネスに必要な一連の流れを管理できる環境を実現するとしている。
公開されたデモでは、センサがNB-IoT経由で駐車場の空き状況を通知することで、スマートフォンから駐車場が空いているかどうかを確認できるほか、空いている駐車場を予約して決済し、パーキングに車を停めると、空いていた駐車場が「駐車中」の状態に変化する様子などを確認することができた。ただし、今回のデモ環境はあくまで実証実験のためのものであり、2017年夏の時点で、NB-IoTなどを用いてどのようなサービスを実現するのかについては、まだ決まっていないとのことだ。
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