8月31日から9月2日にかけて、中国のテクノロジ企業ファーウェイが、エンタープライズ向けイベント「HUAWEI CONNECT 2016」を上海で開催した。1社によるイベントとしては同地域でも類を見ない、同社最大規模のものとなる。
同イベントの最終日、基調講演の会場となった上海メルセデスベンツ・アリーナでは、インテルのCEOであるブライアン・クルザニッチ氏が登壇。同社が手がける“エッジ”向けのマイクロコントローラーユニット「Curie(キュリー)」を紹介したほか、クラウドソリューションや次世代5Gネットワークの開発においてファーウェイと緊密に協力していく考えを示した。
PCのCPU・チップセット市場では独壇場だったものの、スマートフォン登場後のモバイル市場において強い存在感を示すことができていなかったインテルだが、ウェアラブルの分野ではマイクロコントローラーユニット「Curie」で挽回を図る目算だ。
2015年に発表されたCurieは、パターンマッチング技術が盛り込まれたIntel Quark SEマイクロコントローラに加え、BLE(Bluetooth Low Energy)、加速度センサ、ジャイロセンサなどを統合したIoT向けの小型モジュールだ。たとえば、ウェアラブルデバイスなどに搭載することで、装着者の動きから得られたさまざまなセンシング情報を収集できる。
クルザニッチ氏いわく、「これまでは(個別の)センサからデータを得て、データ転送して、他の場所にあるPCなどがデータを受け取り、処理・分析するという手順だった。しかし、Curieなら1つでこれらのアクションをすべて行える」とし、このモジュールを採用したデバイスを女性が手首と足首に装着して動き、リアルタイムでデータを収集・視覚化するデモ映像も披露した。
このように、同社では“エッジ”、つまりネットワークの端に位置するウェアラブルデバイスなどのIoT機器(向けチップ)の開発に注力しているが、それだけでなく「クラウド」や「ネットワーク」の開発も同様に重要性が高いと見ている。
同氏は「あらゆるものがネットワークにつながり、デバイスからデータがどんどん世界に流れ出て、モノとデータの境目はどんどんあいまいになってきている」と語る。こうした時代においては顧客から「エクスペリエンスとパーフェクトなソリューション」が求められ、それに必要なものが、Curieをはじめとする“エッジ”の部品、そして次世代ネットワークとクラウドでもあると考えているようだ。
たとえばクラウドでは、単にセンサなどからデータを集めるだけでなく、そのデータを分析することで価値を生み出すことになると同氏は述べる。こうした動きが進めば、今後「データの洪水」が訪れる。
同氏によれば、現在はユーザー1人あたり1日に数百Mバイトのトラフィックを生み出しているが、2020年までにはこれが1.5Gバイトに増えると見ている。また、自動運転車からのデータは1日あたり4Tバイトに、航空機からのデータは1日あたり40Tバイトに、そしてスマート化された製造工場からは1日で1000Tバイト(1Pバイト)ものトラフィックが発生することになるという。
大きな負荷がネットワークに加わることは想像に難くないが、同氏によればこれは「大きなチャンス」。膨大なデータに対して「ネットワークを最適化することでより多くの価値を生み出せる」からであり、それには次世代ネットワークである高速・フレキシブルな5G技術が必須となる。
ただ、これまでチップビジネス、プラットフォームビジネスなどで多彩な分野の知識、実績を積み重ねてきたインテルであっても、IoT時代の「インテリジェントで広いコネクションをもつソリューションは、1社単独では提供できない」と打ち明ける。「ビジョンを同じくするパートナー」との協力関係が不可欠だと同氏は強調する。現在インテルはファーウェイと共同でクラウドベースの5Gソリューション開発に取り組んでおり、世界各地で5Gのパイロット・テストも実施しているとアピールした。
ただし、クラウドを基盤にしたエコシステムを構築するには、さらにこれまでに築き上げた340以上のパートナー、1700人のデベロッパーらの協力も欠かせないと述べ、インテルがすでに提供しているCLOUD BUILDERS、STORAGE BUILDERS、NETWORK BUILDERS、FABRIC BUILDERSという4つのSDIソリューションなどとともに、クラウドへの取り組みを加速させていく考えを改めて示した。
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