未来へのヒントがみつかる次世代デジタル戦略

ケイ・オプティコムの「mineo フリータンク」--ユーザー同士がパケットを共有する“助け合い”サービス - (page 3)

サービスの内容も技術も、多様性のかけ算から生まれた

——先ほどお話いただいたコミュニティサイトのマイネ王を含め、これまでにあった仕組みを活用した技術だったんですね。このように、ある程度の土台を活用して新たなサービスを生み出すことができた秘訣は、何だったのでしょう。

 やはり、ユーザーとの“共創”が大きなポイントになったと考えます。無論、企画立案や技術に特化した人の意見は欠かせませんが、特定のメンバーだけで閉じこもってはアイデアが乏しくなり、凝り固まってしまいます。

 そこで広くユーザーの声にも耳を傾けることで、意見に多様性が生まれます。「こんなサービスがあったら面白いんじゃないの?」という、いろいろな人の意見が組み合わさり、かけ算のようになって新たなアイデアが生まれる。イノベーションにも、こうしたダイバーシティ的な視点やプロセスが重要なのではないかと思います。

 そのため、マイネ王にはフリーテーマで書き込める「掲示板」や、MVNOにまつわる疑問をユーザーみんなで解決する「Q&A」、さらに「こんなサービスがあったらいいね」という意見を書き込むことができ、それに対して他のユーザーと議論もできる「アイデアラボ」など、さまざまな掲示板を設けているんです。

 ただウェブでのやり取りのみでは感情の細部までくみ取りにくい部分があるので、並行してリアルなオフ会などにもご参加いただき、じっくりお話もする。すぐに情報共有ができるインターネットの利点とアイデアの根本まで探れるリアルの利点、その両面から意見を伺っています。

——多くの方法で、多くの人から意見を募るダイバーシティの取り組みの中で、我々のような広告業界の人間も、何か役目が果たせたでしょうか。

 mineo フリータンクを実現させる技術が、既存の2つのサービスを土台に成り立っているように、何かと何かを組み合わせた発展系が、実はイノベーションの根源なのではないでしょうか。今回の施策では電通さんにご協力をいただきましたが、広告のプロの方たちは、さまざまな業界や業種のことをご存知です。

 そうした点で、私たちだけでは知り得なかった情報や事例を多くご紹介いただき、そこからアイデアを練っていけたことが、今回のサービス実現における活用や応用にも生きていると感じています。

徹底的顧客目線を続けることで、通信から情緒的価値を生み出す

——では、このイノベーションと言うべきサービスを経て、今後へのさらなるチャレンジについて聞かせてください。

 1つ、今後への大きな指針となったのが、4月14日に発生した熊本地震です。

 本来、パケットが引き出せるのは毎月21日以降と決まっているのですが、災害が起きると安否確認をしたり、インターネットでラジオニュースを聞いたりと、パケットを使用する機会が増えます。そこで貯まっているパケットの引き出し解放を、震災翌日の4月15日に前倒ししたところ、コミュニティサイトに集う皆さんからも、「地震で困っている方のために使っていただけるなら、どんどんフリータンクに入れるので使ってください」というお答えが返ってきたんです。

——mineo フリータンクというモノ自体が、企業から提供されているサービスという概念を離れ、ユーザーみんなの共有財産という認識になっているんですね。

 多くのユーザーの皆さんが“フリータンク”にパケットを預けてくださるおかげで、現在、20Tバイトほどがタンクに貯まっています。預けられる量よりも引き出される量のほうが少ないので、タンクにプールされている状態なんです。

 熊本地震の一件に象徴されるように、ユーザーの皆さんに納得してもらえれば、社会に貢献することもできます。募金という表現では語弊があるかもしれませんが、たとえば「こんなことを実現したいので、賛同くださる方はパケットを預けてくれませんか」と募り、ある程度のパケットが貯まったら実際の行動に移すということもできるのではないかと考えています。

 具体的にどんなサービスと言える段階にはありませんが、mineoを使ったパケットのやり取りから、「うれしい、楽しい」ことがたくさんあって、mineoのことを大好きになっていただいたり、「世のため、人のために貢献できた」と感じたりできるような、情緒的価値、社会的価値を何らかの形で見える化して表現できないかと思っています。

——デジタルの分野ならではの目で見ることのできない、非常に概念的なモノですよね。目に見えないパケットを人の血の通った温かいモノのようにやり取りしているというのは、本当にユニークなブランド価値を築かれていると感じます。


ケイ・オプティコム 上田晃穂氏(左)、カケザン クリエイティブプランナー 新野文健氏(右)

 おっしゃる通り、通信設備があって電波があってと、私たちが行っている通信事業はどこか無機質に思える分野ですが、そこでやり取りされているのは生身の人間の声や、感情のこもった言葉です。ですから、その心のやり取りを感じてもらえるようなサービスを提供していきたいと、いつも考えています。

 しかし今回、評価いただいたサービスがそうであったように、真のお客さま起点でなければ実現できないことです。ユーザーの皆さんが毎日くださる意見を欠かさず読み、欠かさずお返しするのは容易なことではなく、それが途絶えた瞬間に信用を失うことにもなりかねません。

 ただ、覚悟を決めてやり続ければ、次第にノウハウとなって新しいサービスに繋がります。そうしてmineo フリータンクが生まれたように、今後もユーザーと真摯に向き合い続けるという覚悟を失わず、「だから私はmineoを選ぶ」と言っていただけるような、イケてる面白いサービスを生み出していきたいと思います。

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