スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなどの次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。
今回、取り上げるのは「コードアワード2016」において、「グッド・イノベーション」を受賞したケイ・オプティコムによる「mineo フリータンク」。格安で携帯電話サービスを提供するMVNO事業への参画企業が増加し、他社との差別化を図ることが難しくなる中、ユーザー同士がパケットを共有し合い、“助け合い”を思わせるサービスの提供によって独自のポジションを築いた。
他にはない革新的発想は、どこから生まれたのか。そして1つのイノベーションを築いたのち、次は何を目指すのか、モバイル事業戦略グループでグループマネージャーを務める上田晃穂氏に聞いた。(聞き手はカケザン クリエイティブプランナーの新野文健氏)
弊社では大手の携帯電話キャリアから通信設備を借り、ユーザーに格安で提供するMVNOサービス「mineo(マイネオ)」という携帯電話事業を行っています。現在、同様のサービスを展開するMVNOが200社ほどありますが、そのうち、弊社を含めた一部のMVNOや大手キャリアでは、パケットを有効活用する方法として、ユーザーが契約した月ごとのパケット上限のうち、使い切れずに余った分は翌月までなら繰り越せたり、家族間や友人間で分け合えたりできるサービスを提供しています。
しかし、それでも翌々月まで余ってしまった場合には、そのパケットは消滅してしまいます。そこでmineoは独自サービスとして、「マイネ王」というコミュニティサイトの会員限定で使える“フリータンク”と名の付いた貯金箱のようなものに余ったパケットを預け、足りないときには毎月1Gバイトまでなら引き出せるようにしました。これがmineo フリータンクです。
私たちは2014年6月にMVNO事業に参入しましたが、業界では、すでに価格競争の真っ直中。あらゆる同業他社が価格重視のメッセージを打ち出す中、ユーザーに向けて安さだけではない、何か新しい価値を提供できないかと考えたのがきっかけです。
コミュニティサイトのマイネ王は、mineo フリータンクを開始する前から運営していたサービスで、コミュニティサイトの中で利用者の皆さんとコミュニケーションをし、ディスカッションしていく中で、そこから何か新しいコトが生まれるのではないかと考え、立ち上げました。
しかし、当時のコミュニティサイトの会員数はmineoユーザーの約5%、人数にして約5000人という状況でした。何とか会員数を増やさなければという思いはもちろん、増えた暁にはユーザー同士のコミュニケーションをさらに活発化させ、マイネ王の本来の目的である、ユーザーの声から新しいコトを生み出す、その土壌をつくりたいという思いがありました。
ユーザーの声から新たな価値をつくる、それはすなわち“共創”です。ユーザーの皆さんと一緒になって何かを形にできれば、つくり上げる楽しさやワクワク感、つまり安さだけではない価値を感じていただけるのではないかと。mineo フリータンクは、新たな価値の提供と“共創”の土壌となるべきコミュティの活性化、この2つを実現させるべく生まれたアイデアだと考えています。
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