「第3の輸送革命」--Lyft創業者の真の狙いは都市と社会の再構築

 「こんなに立派なポジショントークを目にしたのはこれが初めてかもしれない」。思わずそんな感想を抱いたエッセイを少し前に読んだ。今回は「The Third Transportation Revolution - Lyft’s Vision for the Next Ten Years and Beyond(仮訳:第3次輸送革命:今後10年とその先を見据えたLyftのビジョン)」というこのエッセイについて紹介させいただく。

「自動車中心社会」の発達と弊害

 このエッセイが公開されたことはニュースでも採り上げられていた。

 参考記事:「Lyft創業者、2021年には自社サービスで過半数が自動運転になると予想」

 ライドシェアサービスや自動運転車に関する部分はほぼこの記事に書かれた通りだと思うが、ただしエッセイのタイトルに掲げられた「第3の輸送革命」とは何なのか、あるいはその前提となる「第1」「第2」の輸送革命とはそれぞれどんなことを指しているのか、といったことに言及した部分は見当たらない。今回は、この欠落部分を埋めることを主な狙いとしたい。

 このエッセイをまとめたJohn Zimmer氏(米ライドシェアサービスのLyft共同創業者)や、Lyftを取り巻く状況などは後述するとして、まずは過去に起こった2度の「輸送革命」についてZimmer氏の説明を記す。

 Zimmer氏のいう「第1の輸送革命」は、米国で19世紀に起こった鉄道網と運河網の発達を指している。この発達で、人や大量の物資を効率的に動かせる範囲が格段に広がった。また各地の大都市が現在のように発展するきっかけをつかんだのもこの時期で、シカゴやロサンゼルス、ボルチモアなどが恩恵を被った具体例として挙げられている。

 「第2の輸送革命」のほうは、20世紀に起こった自動車の大量普及と、その影響で生じた都市や社会の変化を指している。いわゆる「郊外化」現象、それと背中合わせの関係にある都市中心部の空洞化などはよく知られる通りだが、簡単に言えば次のようになるかと思う。

 20世紀初期に、大量生産技術の発達で自動車の値段がどんどん低下した(T型フォードなど)、またその存在を前提とした安価な住宅建設の動きが特に第二次大戦後に各地に広がった(ニューヨーク郊外にできたレビットタウンなど)。一方、都市部への有色人種の流入を嫌気した白人らは、資金的裏付けができた人から順番に環境のいい郊外へと出ていった。その結果、都市の中心部は郊外からの通勤者が自動車で素通りする場所になり、ただし仕事中などに車を停めておく場所は必要だから駐車スペースだけは増え、それまでたくさんあった個人商店や小さな飲食店などは経営が立ち行かなくなって、どんどん消えていった。同時に、中心部には郊外に出ていけない人たち(低所得者層)だけが取り残された結果、「インナーシティ(inner city)」と呼ばれるような問題(治安悪化など)も生まれた。

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