TingParkアプリを使用するユーザーは、自家用車を所有する富裕層か、商用車を保有するビジネスユーズ層がメインとなる。香港の自動車取得と維持費には多額の資金が必要で、自家用車を保有できるのはほぼ富裕層のみ。そして必然的に、車の種類も高級車ばかり……ということになるわけだ。
背景として、土地の狭い香港では、交通渋滞などを起こさないために、自家用車が増えることを制限している。税金が安いことで知られる香港だが、先述の事情から、自動車取得税は世界最高水準だ。
また、取得後の維持費としてかかってくるガソリン代も高額だ。世界的なガソリン価格関連サイト「グローバル・ペトロール・プライス(Global Petrol Prices)」の調査によると、世界で最もガソリン価格が高いのは香港で、1リットルあたり1.87ドル(約190円)。渋滞が多く、山や坂も多いため、燃費には厳しい環境といえるだろう。
香港では、短期利益を狙う投資家の視線が駐車場に集まっており、転売して利益を上げる「駐車場ビジネス」が成り立っている。1台分の駐車場は月額3800~4700香港ドル(約4万~5万円)で賃貸され、利回りは4%ほど。購入する場合どれくらいの資金が必要かというと、都心部から離れても1000万円以上、都心部であれば1400万円以上(1台のスペースあたり)。庶民が簡単に手を出せる価格帯ではない。
中国からの投資マネーが流入して不動産市場は活況を呈する一方、資金がない若者たちの住宅事情は深刻だ。財産が100万ドル(約1.2億円)以上の億万長者数の伸び率が世界一の香港。夢見る暮らしを手に入れるためのハードルは、とてつもなく高い。
こうした背景から、TingParkの成長の鍵は富裕層の心をつかめるかに掛かっている。いかに登録駐車場数を増やせるか、またアプリを利用する固定客を獲得し、ユーザーのアクティブ率を高め、日常的に使ってもらえるかが、継続的に収益を得るための課題となるだろう。
政府が公式に同種のアプリを開発するという話も出ており、他業者との過当競争を上手く切り抜けていけるかどうかが鍵となる。「駐車場版Airbnb(エアビーアンドビー)」のようなスタイルで、駐車場が空いている時間をシェアする個人も取り込めれば、勝機はあるかもしれない。
(編集協力:岡徳之)
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