ナンバリングタイトルについて振り返ったあとは、公募によって募集したドラゴンクエストの開発にまつわる質問に対して、2人が回答するコーナーに移った。
最初の質問は、戦闘モードに入ったとき、ファミコン版の初代作では「○○が あらわれた! コマンド?」というメッセージが表示されていたが、2作目からは「コマンド?」の部分がなくなっていた。そのコマンド?を入れた狙いやなくなったのはなぜか、というもの。
堀井氏は、まず「この質問で指摘されるまで気付かなかった」とした上で、ポートピア連続殺人事件をはじめ、当時のPC向けアドベンチャーゲームではコマンド入力を促すのが普通であり、そのときの名残であろうと振り返りつつ、2作目以降は不要だから外したと回答。
続いては、開発の終盤においてバランス調整やデバッグに、どのくらい時間や人数をかけているかというもの。これについては作品ごとに規模も内容も違うため一概には言えないと前置きをしつつ、「IV」、「V」、「VI」あたりでは、シナリオを書き上げた後、2カ月ほどデータ作りや収集をし、テストプレイのレポートも確認しつつ自らもプレイして調整していたという。
どこに基準を置くのかという質問には、堀井氏がマニアックな遊び方をするほうではないということもあってか、自身が気持ちよく遊べるかどうかで決めているという。そしてバランス調整は毎回ギリギリのところまで行っていると語った。
「V」において、モンスターを仲間にできるシステムはどのような経緯でできたものか、という質問について堀井氏は、「IV」における戦士ライアンのシナリオで、冒険の途中に回復役であるホイミンが仲間になるという流れがあり、モンスターとともに冒険するのも面白いと感じたことがきっかけと回答。ちなみに余談として、キラーパンサーにつけられる名前のひとつに「ゲレゲレ」というものがあるのは堀井氏の考えで、モンスターの名前にはネタや遊びになるような要素をなにか1つは入れたいという。
オンラインゲームである「X」のシナリオは、Ver.1の発売の時点でどこまでできていたかという質問には、Ver.3で新たに登場する竜族をはじめ、人間ではない5種族が存在するという設定は初期段階から決まっていたと振り返る。今後についてはVer.4の骨格となるものができてきた段階であり、Ver.5はオンラインゲームという性質もあり、プレーヤーの動向や要望を踏まえてこれから取り組むという。齊藤氏は、次に実装される職業がすでに決まっており、楽しみにしてほしいと付け加えた。
初代作において、ゲーム開始直後に竜王の城を望むことができるようなマップデザインにした理由について「人間は目的がわかった方がやる気が出て頑張るから」と、ここに行くようにとわかりやすくしたという。一方で、目的地は示しても行き方が分からないようにして、それを探るように進めていくという狙いがあるとした。
マップ制作については、はじめに全体のおおまかな形を作って、そこから城や街などを配置する形で進めているという。制作作業や調整は、ゲームのグラフィクスが2Dから3Dに変化したことによって、より複雑になったと語った。
ゲーム内に登場する地名については、実在する地名をヒントにして命名していることも語られた。「アレフガルド」は始まりを意味する「アレフ」、「サマルトリア」は出会いを意味する「サマル」に、実在の地名を組み合わせて“らしさ”を出しているという。またマップ制作においても、現実の世界地図から地形を参考にするとも付け加えた。
俗に“クリティカルヒット”と呼ばれるものを「かいしんのいちげき」(会心の一撃)と名付けたことについては、マップなどとは違い参考にしたものはなく「そういう気がしたから」と堀井氏がコメント。漫画家志望だったこともあってか、短いセリフでいかにドラマティックに表現するか、また文字もビジュアルのひとつであるとの観点から、改行も含めて気をつかったとしている。
齊藤氏からの質問として「ゲームデザイナーに一番必要で、一番大事なもの」を問いかけられた堀井氏は3つを挙げた。まず、自分が面白がるものを考える“発想力”は大前提とした上で、それをシステム化することの“忍耐”、そして「せっかく作ったから……」ともったいがらずに、これは違うと感じたものを捨てる“勇気”とした。
最後に、開発が進められているシリーズ最新作「ドラゴンクエストXI」についても触れられた。2人によれば、現状においてシナリオは上がっている状態であり、それをもとにテストプレイをしながらディティールを詰めているところだという。チェックのほうはニンテンドー3DS版の3D表示バージョンで行っている。これは修正に対する反映のレスポンスが早いためであり、対応方法が固まったら他のプラットフォームに反映させていく形を取っていると説明した。
ちなみに本作では「カジノ」があるほか、30周年記念作らしく「ふっかつのじゅもん」といった懐かしい要素も取り入れることを明らかにした。
講演を締めくくる形で堀井氏は、遊びの選択肢が増え、日々忙しいうえに遊ぶことにせっかちな人も増えた現代の環境においては、「実際に遊べば面白い」というのは前提の上で、最初に面白そうと思ってもらえるようなつかみが大事だと語った。そして、ゲームに限らず、さまざまなエンタメに触れ“遊びのアンテナ”を広げておくことが重要だとメッセージを送っていた。
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