ドラクエ生みの親、堀井雄二氏が語る「国民的ゲーム」のつくり方

永井美智子(編集部)2009年09月03日 19時19分

 9月3日に開催されたゲーム開発者向けイベント「CESA Developers Conference 2009」(CEDEC 2009)では、ドラゴンクエストシリーズの生みの親として知られるゲームデザイナーの堀井雄二氏が基調講演に登場し、ゲーム開発の裏話を語った。ここではその中でも、堀井氏がゲーム開発時に気をつけていることや、こだわりの部分を中心に紹介する。

 なお、講演の様子は記事「噂の「まさゆき地図」は仕込みではなかった--開発者も驚くドラクエ9」「ドラクエ9、最大の難題は「既存のファン」--今だから語れる開発秘話」でも紹介している。

「能動的になれれば、どんなゲームも面白い」

堀井雄二氏 ゲームデザイナーの堀井雄二氏

 初代ドラゴンクエストが生まれたのは1986年。任天堂のファミリーコンピュータ(ファミコン)が人気を集めていた時期だ。「アーケードゲームはある程度短時間でゲームオーバーしなければならないという宿命があったが、家庭用ゲーム機なら、だらだらとずっと遊ぶゲームも作れる。それなら、ロールプレイングゲーム(RPG)も作れるのではないか」(堀井氏)と考えたのだという。

 ただ、当時はハードウェアのスペックが低く、当時の容量はわずか64Kバイト。いかに小さいファイルサイズで世界観を表現するか、ビット単位で調整していったという。

 しかし、堀井氏が最も気をつけたのは「わかりやすさ」だ。「RPGはやれば面白いが、敷居が高い。何をどうしたらいいかわからない」(堀井氏)。そこでまず、アドベンチャーゲームの「ポートピア連続殺人事件」を1983年にリリースし、コマンドを選ぶことでゲームが進んでいくという世界に慣れてもらった上で、3年後にドラゴンクエストを発売した。

 また、ゲームの操作も、プレイをしているうちに自然に覚えるように仕向けていった。「僕はゲームを遊ぶときに、マニュアルを読まない人。PCでも、まず触ってみて、わからないところがあったらマニュアルを見る。だから、RPGでもマニュアルを読まなくてもわかるものを作ろうと思った」(堀井氏)

 ただ、アクションゲームと違って、RPGの場合はプレーヤーが能動的に動かないとゲームが進まない。そこでドラゴンクエストではゲーム開始時に「王様の部屋」に主人公を閉じこめ、部屋にある宝箱を開けて鍵を取らないとゲームが始まらないようにした。

 「ボタンを押せばリアクションがある、ということを覚えてもらえば、その後もゲームができるだろうと考えた。ある意味、ドラゴンクエストの“文法”のようなもので、それさえ覚えれば予測も応用もできる」(堀井氏)

 「序盤に何をしたらいいかがわからないと、プレーヤーはゲームを投げてしまう。逆に、何をしたらいいかがわかると、プレーヤーに期待が生まれて、自ら遊んでくれる。能動的になれれば、どんなゲームも面白い」(堀井氏)

 ただ、ゲーム内で説明をしすぎてしまうと、プレーヤーは逆にその説明を読む気をなくしてしまう。いかに簡潔に、理解してもらうかが重要だという。「わからなくてもゲームをクリアできてしまうような部分はスルーする。わかった人は得をする、というくらいの感じでいい」というさじ加減で、堀井氏は考えているそうだ。

 「文句を言う人はまだいい。怖いのは、『自分はゲームに向いていないんだ』と黙って去っていって、2度と戻ってこないケース。そういう人を増やしてはいけない」(堀井氏)

 最新作「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」(ドラクエ9)の開発スタッフであるスクウェア・エニックス ディレクターの藤澤仁氏も「『こういうことでうまくいかないけど、これはレアケースだからいいんじゃない』と考えがちだが、400万人のプレーヤーがいれば、1%でも4万人が困ることになる。こういうのをとにかくなくそうとした」と、ドラクエ9の開発時のことを振り返る。

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