堀井雄二氏がドラクエ30年の歴史とともに語った“ゲームデザイナーに必要なもの” - (page 2)

ファミコンでRPGを作りたいと思ったきっかけと、ナンバリングタイトルの思い出

 その後「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」や「軽井沢誘拐案内」といったアドベンチャーゲームの開発に取り組むなか、「ウィザードリィ」や「ウルティマ」といったRPGに熱中していたことから、堀井氏のなかでRPGを作りたい気持ちが生まれた。そして当時としては「これが家で遊べるのか」と堀井氏も感じるほど画期的な性能を持っていたファミコンが発売されたことで、「ファミコンでRPGが作りたい」と思うようになったという。

 このことをエニックスに打診すると「その前にアドベンチャーゲームを発売したい」との意向により、ポートピア連続殺人事件の移植版を開発。この移植版に3Dダンジョンが追加されているのも、RPGを作りたい気持ちの表れでもあった振り返る。そしてソフトの反響も良かったことから、ドラゴンクエストの開発に乗り出す。

CEDEC「ドラゴンクエスト」堀井雄二氏
ナンバリングタイトルについて、開発の思い出は語りきれないとしながらも、ダイジェスト的に振り返った

 ドラゴンクエストの名称は、なじみのある「ドラゴン」と、当時としてはなじみのない「クエスト」を組み合わせる形で付けられたと明かす。そしてここからシリーズのナンバリングタイトルにまつわる思い出が語られた。初代作である「ドラゴンクスト(I)」は容量が64Kバイトであったため、いろいろな要素をそぎ落とし、工夫を凝らして形にしたという。

 「ドラゴンクエストII」では容量が倍になったことからパーティプレイを導入。もっとも本作からはじめるプレーヤーのことも考慮し、まずは1人で冒険をはじめ、仲間を見つけていく流れにしたという。齊藤氏は、当時のPC向けRPGはシステム上でパーティを組むものになっており、そこには世界観やストーリーがなかったため、ストーリーで仲間を見つけられることに感動したと振り返った。

 「ドラゴンクエストIII」では容量がさらに増えたことにより、本来やりたかった仲間の職業選択などの要素が入れられるようになったという。初代作からここまでがロトシリーズ3部作となっているが、初代作のときに「III」のことは全く考えていなかったという。また、続編の世界観が順番に後になっていくのもつまらないからと、「III」では初代作の前の世界としたことも、うまくはまったと堀井氏は語っていた。

 「III」が社会現象ともいえるヒットとなったことから、「ドラゴンクエストIV」の開発にはとてつもないプレッシャーを感じたと振り返る。ひとつのストーリーを長くすることを避けるのと「キャラクターにもそれぞれに人生がある」という観点から、章立ての構成として各キャラクターごとにエピソードを展開。それを全体のストーリーとしてまとめていくという形にした。

 「ドラゴンクエストV」では、「プレーヤーを本気で悩ませること」を考え、“結婚イベント”を入れたと振り返る。そして「親子3代で魔王を倒す」というコンセプトも盛り込んだ。ただ、主人公が変わってしまうことに抵抗を感じたこともあり、主人公が子どもの頃から物語が始まり、そのまま青年へ成長するという流れにしたという。

 「ドラゴンクエストVI」では、2つの大陸を行き来する形で展開するという試みや、代表的な乗り物である「魔法のじゅうたん」によってプレーヤーがどこにでも行けるようになったため、進行が破綻しない形でのマップ制作に苦心したと語る。

 「ドラゴンクエストVII」では、プレイステーション用ソフトとなったことにより、使用できる容量が格段に増えた。このこともあり、スタッフの募集をかけて多くの人たちが関わったことや、齊藤氏が「長かった……」と口にするほど時間をかけて開発に取り組んだと振り返る。また、「ただかわいいだけではつまらない」と、主人公に対してボロクソに言うほどの気概を持ったマリベルが印象に残っていると語った。

 「ドラゴンクエストVIII」では、アイデアが出尽くした感もあるなかで開発会社のレベルファイブと出会ったことが大きく、フル3Dグラフィックによる表現を目の当たりにして、それがそのまま売りになると感じたという。

 「ドラゴンクエストIX」は、ニンテンドー3DSによって、テレビの前以外での遊び方を提案できたことや、当時ネットワークプレイの敷居が高い環境において、すれちがい通信によって“マルチプレイっぽい遊び”を提供できたことが印象的と振り返る。また「まさゆきの地図」についても触れ、大きな話題となったことや、あっという間に日本中に広まっていったことに「バーチャルがリアルを侵食する面白い現象だった」と語った。

 「ドラゴンクエストIX」は、ナンバリングタイトルとして初めてのオンラインRPGであり、現在でも運営が続けられている。そのこともあって多くは語れないとしながらも、構想は10年ほど前からあったとコメントしていた。

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