欧州連合(EU)は現地時間8月20日、Appleに130億ユーロの追徴課税をするようアイルランド政府に命じた。同社とアイルランドの間の協定が違法であると判断した。
欧州委員会(EC)の発表によると、EUの反トラスト当局は、米国を含む他の国々がそれぞれの管轄区域内で同社に対して追徴課税を要求するならば、アイルランドに対して支払われる130億ユーロが減額される可能性があるとしている。
「EU加盟国が一部の企業に課税優遇措置を供与することはできない。その行為は、EU State Aid Rules(EU保護政策規則)に違反している」と、ECのMargrethe Vestager委員は述べている。
Apple以外にも多数の米IT企業が、米国外に現金を保有することによるメリットを享受している。この方法によって企業は、米国に現金を移転する場合の多額の課税を免れることができる。
今回問題となっているのは、Appleがアイルランドとの間で、多額の利益を同国で計上する代わりに同国での雇用を確保するという協定を結んでいたことだ。この協定によって、Appleは税率を米国の35%超よりもかなり低く抑えることができる。Appleは現金の90%以上を米国外に保有している。
Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏はEUの決定を受けて、800語近くに及ぶ声明を同社ウェブサイトに掲載。アイルランドがAppleに優遇措置を供与したいう主張は「事実無根であり、法的根拠もない」とした。
「今回のECの行動は前例がなく、広い範囲に深刻な影響を及ぼすものだ」とCook氏は記している。「ECは実質的に、アイルランドの税法をECが望む法律に置き換えることを提案している」(同氏)
Appleもアイルランドも、今回の決定に異議を申し立てる意向を示している。Appleは声明で、「決定が覆されると確信している」とした。
Wells FargoのアナリストであるMaynard Um氏は、「今回の決定は残念なもので、Appleは異議申し立てに自信を見せているが、そのプロセスには数年かかる可能性」があり、それまでの間のApple株価に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。
アイルランドの課税措置にはこの数年間、EUの厳しい監視の目が向けられている。EUは、アイルランドが十分な税金を徴収しておらず、同国の税率は12.5%と既に低いにもかかわらず、Appleなどの企業にあまりにも大きな優遇措置を供与していると考えている。
ECによると、アイルランドに供与された優遇措置により、Appleは2003年の欧州における利益に対して実質的に1%の法人税しか支払っていないという。2014年にAppleに適用された税率は0.005%だった。
Appleはどのようにしてこれほどまで低い税率を維持し続けたのだろうか。欧州の規制当局によると、Appleは欧州における販売による利益を分割し、そのほんの一部のみをアイルランド法人に移転していたという。利益の大部分は、どの国にも拠点がなく課税対象とならないApple Sales Internationalの「本社」に移転されていたとECは述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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