何事も、そう簡単には変わらないのかもしれない。
Tim Cook氏は、Appleの最高経営責任者(CEO)を正式に引き継いだ5年前、Steve Jobs氏の衣鉢を継げるのかという疑問の渦中にあった。
Cook氏は今週、CEO就任5周年を迎えるが(正確には米国時間8月24日)、疑問はまだ払拭されていない。
Jobs氏は公式にCEO職から退くとき、「Appleの最も輝かしく革新的な日々はこれからだ」と信じていると語った。
その言葉は正しかったのだろうか。Cook氏の業績を見ると、にわかには肯定しがたい。確かに、Cook氏は大成功もいくつか収めている。たとえば、大型になった「iPhone 6」は記録的な売り上げに大きく貢献した。同社はまた、環境問題や同性愛者の権利といった社会的大義を積極的に掲げるようになった。だが、失敗したこともある。「Apple Watch」が最終的にヒット商品と言えるのかどうかは、今もなお結論が出ていない。「Apple Music」も同様だ。皆さんは使ってみただろうか。
Cook氏が成し遂げてきたことは基本的に、製品とサービス、たとえば「Apple TV」や「iPad」の改良だ。そうした改良は評価されているが、まったく新しい分野を切り開いたわけではない。
「Tim Cook氏は、現職CEOのなかでも特に親切で慈善精神に富む人物だ」。Appleの株主であるMerlin Asset Managementの最高投資責任者、Michael Obuchowski氏はこう評している。「今や誰もが十分に認識していることだが、Steve Jobs氏はどんなに欠点があろうともクリエイティブな天才であったし、Appleは人材が豊富とされているものの、Jobs氏の発想やデザイン愛を埋めるまでには、とうてい至っていない」(Obuchowski氏)
米CNETは、Cook氏の過去5年間の動向を以下にまとめてみた。また、Appleがこれからの5年間もトップの座を保つために、同氏が何をなすべきかについても考察する。
なお、AppleからCook氏のコメントは得られなかった。
Cook氏が収めた最大の成功は、iPhoneのラインアップを拡大したことだ。今では、4.7インチのiPhone、5.5インチの「Plus」モデル、4インチの「iPhone SE」と、新型のiPhoneが毎年3種類リリースされている。2014年のiPhone 6で大型デバイスに進出したことは、Appleが世界最高の利益を誇る企業となる一因になった。
さらに、世界最大のキャリアChina Mobile(中国移動通信)との取引を成立させたことで、最も人口の多い国での販売網を拡大した。Cook氏が次に狙うのはインドだ。こちらも巨大マーケットとなる可能性がある。
Cook氏のもとで、Appleは新しいサービスの提供を開始した。モバイル決済サービスの「Apple Pay」や、楽曲ストリーミングサービスApple Musicなどだ。現在のAppleは、「App Store」などのサービスの売り上げが、「Mac」コンピュータラインアップの売り上げを上回っており、2017年にはサービス事業だけでFortune 100企業並みの規模になる見込みだという。
Appleは、社会的大義に対して積極的になった。Cook氏は2014年10月、自身が同性愛者であることを告白し、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの運動を後押しした。また、社内でも多様性の拡大を推進している。同氏は社会正義を支持しており、Appleの慈善活動を強化した。多額の税金を納めているのだから寄付の必要はない、というJobs氏の信念を退けた形だ。
Appleは環境保護の方針も強めており、すべての事業活動を再生可能エネルギーでまかなうという目標を打ち出している(2015年には93%を達成した)。
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