Apple Storeの中がこれほど興奮に包まれているのを見るのは初めてだ。私は記者として、「iPhone」の新モデル発売を何度も取材しているのだが。
ロンドンのコベントガーデン広場にある石造りとガラス張りの歴史的な建物に、十数人の子どもたちのはしゃぐ声が響いている。
今日は、「Apple Camp」の2日目だ。3日目には集大成のレースが開かれる。みんなが3階の奥にある「シアター」の周りに集まった。よく見ようと石柱に登る子もいれば、「iPad」を、それに自分の命が懸かっているかのようにつかんで床にしゃがんでいる子もいる。年齢に関係なく、誰もが夢中になっている。
フロアには多数の「Sphero(スフィロ)」がウロウロしていて、歩くのも危険だ。Spheroとは、あちこちに素早く動きまわる球形のおもちゃだ。Spheroがどちらに転がって行くかは見当もつかない。それを知っているのは、この小さなロボットを制御している子どもだけだ。
実際、子どもたちがSpheroの制御に必要なスキルを身につけるスピードは驚くべき速さだ。その日のセッションは、コンピュータの画面を囲んでのデモで始まった。Appleの従業員が子どもたちに、「iPad」アプリでSpheroを動かしたり、動きをプログラミングしたりする方法を説明した。子どもたちは説明を1回聞いただけで理解していた。
Appleはここ数年にわたり店舗でのサマーキャンプを展開してきたが、コーディングとロボティクスに関するセッションは今回が初めてだ。8歳~12歳の子どもたちは、この3日間のキャンプで、iPadと、転がるかわいいロボットのSpheroと、プログラミング言語「Tynker」を使ってコーディング技術を学ぶ。こうした、次世代の技術人材に刺激を与え、教育する取り組みは、MicrosoftやGoogleなどの他社も実施している。
だが、これは人材採用のためのワークショップでも、ブランド構築目的のイベントでもない。ライバル企業と同様、Appleは教育市場向け製品に注力している。結局のところ、若くて感受性の強い集団に自社製品を紹介するのは悪いことではない。AppleのロゴをあしらったライムグリーンのTシャツを着た子どもたちは、既に小さなApple従業員のようだ。そして、彼らのプログラミングの飲み込みの良さをみると、10年後にAppleにとって理想的な人材となっている可能性は十分だ。
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