ウォズニアック氏が語る「発見」の瞬間--アップル40年の歴史の幕開け - (page 3)

Jessica Dolcourt (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2016年08月31日 07時15分

 会合では、8008プロセッサのデータシートが配られました。それを持ち帰って、マイクロプロセッサの発展にショックを受けました。高校時代に私が何度も何度も設計したような、完全なプロセッサの段階にまで進歩していたからです。その晩にApple Iの完全なイメージが頭でできあがり、自分専用の使えるコンピュータを、ほとんどお金をかけずに持てるようになると思いました。私のターミナルには、人間用の入出力装置はあったので、マイクロプロセッサを追加するだけでした。

 最初の会合があった夜のことは一生忘れないでしょう。

--Apple Iはあなたの子どもであり、大切なプロジェクトでした。マイクロコンピュータというものが、まだホビイストの活動でしかなかった時代に、そんなコンピュータを作ったことは、あなたにとってどんな意味がありましたか。

 私は長い間、プロセッサを「自分で作る」というホビイストのステージを過ごしてきました。しかし、HP(Hewlett-Packard)では、計算機の部署で働いていました。HPの計算機にはカスタムプロセッサが使われていて、計算機の電源を入れると、押されたキーを判定するプログラムが動き始めます。そこからアイデアが浮かびました。私が作るコンピュータも、起動すると小さなプログラムが動いてデータを入力できるようにすればいい。これなら、私の「Cream Soda」コンピュータ(5年前に製作)が備えていたフロントパネルのスイッチとランプは不要になるはずだ、と。これが「ほら、見てみて」という段階でした。私はコンピュータを、タイプライターや計算機のように人が使える当たり前のものにしたかったのです。

 設計が完了して動作するようになったものをホームブリュー・コンピュータ・クラブに持っていきました。気恥ずかしかったけど、「作者」がみんなやっているように、自分の技術プロジェクトを何とか披露しました。ほんの少しの安価なチップだけで、ほかには費用のかかる余分な接続がほとんどなく、プログラミング言語を実行できるコンピュータを作れるところを見せて、参加者をあっと言わせようと思っていました。

 著作権や会社の意向はなしで、設計図、ハードウェア、ソフトウェアを配ったりもしました。社会(コミュニケーション、教育、マニアの地位)の変革を語る人たちみんなに、300ドルで自分のコンピュータを作ってもらいたかったからです。賛同してくれる人はごく少数で、1人しかいなかったかもしれません。

 パーソナルコンピュータの公式が、私の肩越しにのぞいてくるみんなに渡っていきました。やがて、ほかの人も思いつくようになりましたが、普通の人が手頃な値段で使えるコンピュータというものを発想したのは、私が最初でした。これ以前のコンピュータはどれも、フロントパネルにスイッチとライトが並んでいたものでした。これ以降のすべてのコンピュータには、キーボードとビデオディスプレイが付くようになりました。

 Steve Jobsは別の州にいたので、街にやって来て私がクラブに連れていき、何がどうなっているか見せるまで、このコンピュータの存在すら知りませんでした。

--ホームブリュー・コンピュータ・クラブが現代に遺したものは何だとお考えですか。つまり、このクラブについて今の世代は何を知るべきでしょうか。

 ホームブリュー・コンピュータ・クラブというのは、善意のホビイストや作者たちが本当にテクノロジの世界を変えられるという見本です。メンバーは誰ひとりとして、お金などのリソースを持ち合わせていませんでした。コンピュータに詳しくて、自分のコンピュータが欲しいけれど、蓄えはない連中ばかりでした。

 私たちのアイデアは、自分たちにとっては大きな意味がありましたが、利益を追求する企業には無意味でした。今、ホームブリュー・コンピュータ・クラブは多くの若者にとってインスピレーションの源になります。既存の企業から、ホビイストだの機械いじりだのと見下げられても、自分たちのプロジェクトで大きな市場を生み出すかもしれない、そんな若者たちにとってのね。

 本記事には、Connie Guglielmo氏にご協力いただいた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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