MITのシーモア・パパート氏が死去--LOGO言語、100ドルPCなどで偉大な足跡

 マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授で、教育用プログラミング言語「LOGO」や「LEGO MINDSTORM(レゴ マインドストーム)」、One Laptop Per Child(OLPC)によるいわゆる“100ドルPC”の開発、人工知能(AI)研究、MIT Media Lab創設などの業績で知られるSeymour Papert氏が2016年7月31日、米国メイン州の自宅で死去した。88歳だった。


ありし日のPapert氏(1988年撮影、出典:MIT)

 Papert氏は1928年に南アフリカで生まれた。同国のウィットウォーターズランド大学で数学を学び、反アパルトヘイト運動で活動するなどした。その後、英国のケンブリッジ大学で数学を研究。スイスのジュネーブ大学では哲学者であり心理学者でもあるJean Piaget氏と研究に取り組み、児童教育に関する着想を得た。

 1963年にMITへ移った後、AI研究者のMarvin Minsky氏からMIT人工知能研究所(Artificial Intelligence Lab)の共同ディレクターに任命された。同研究所は、現在MITコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory:CSAIL)へと発展している。Papert氏とMinsky氏は、「AI研究のターニングポイント」(MIT)とされる書籍「Perceptrons(パーセプトロン)」の共著者でもある。

 MITが1985年にMIT Media Labを設立する際、両氏は創設メンバーとして参画。Papert氏は、認識論および学習に関する研究グループの活動を率いた。なお、MIT Media Labの現所長は伊藤穰一氏

 コンピュータがまだ高価だった1960年代、Papert氏はコンピュータは情報処理だけでなく、子どもたちの教育に役立つと考え、構成主義者学習という概念を組み立てていった。そして、子どもが画面上のタートル(カメ)で絵を描くなどしてプログラミングを楽しく習得していけるよう、LOGO言語を開発。ブロックメーカーのLEGOと協力し、LEGOブロックと組み合わせて実際にカメのロボットを動かせる「LEGO LOGO」の開発や普及に携わった。

 科学・技術・工学・数学(STEM)教育の原点ともいえるPapert氏の考えは、「Mindstorms:Children, Computers and Powerful Ideas(マインドストーム:子ども、コンピュータ、そして強力なアイデア)」で学べる。現在LEGOが販売しているSTEM教材「LEGO MINDSTORM(レゴ マインドストーム)」の名称は、この書籍にちなんだ。

LEGO MINDSTORMとPapert氏(出典:MIT)
LEGO MINDSTORMとPapert氏(出典:MIT)

 Papert氏は、貧しい国々の子どもたちにPCを届ける活動にも尽力した。MIT Media Lab初代所長のNicholas Negroponte氏や、「Dynabook(ダイナブック)」などで知られるコンピュータ分野のビジョナリーであるAlan Kay氏とともに非営利団体One Laptop Per Child(OLPC)を設立し、100ドルPCと呼ばれたノートPC提供活動に取り組んだ。Negroponte氏は、「OLPCの提供したすべてのノートPCは、Seymourインサイドだ」と述べている。

貧しい国々の児童教育に尽力(1982年撮影、出典:MIT)
貧しい国々の児童教育に尽力(1982年撮影、出典:MIT)

 MIT Media Labは、Papert氏の足跡や業績をたたえる式典などを今後数カ月にわたって開催する予定。


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