「スマートフォンメッセンジャーとしての世界での陣取り合戦はほぼ終わった。この状況のなかで新しい国に展開しても成功確率は低い。いま我々がやっている“スマートポータル”が次の大きな波になると思っている」――LINE代表取締役社長の出澤剛氏は、7月15日に開かれた上場記念会見で、次なる戦略を語った。
同社は、7月14日(現地時間)にニューヨーク証券取引所へ、7月15日に東京証券取引所市場第一部へ、それぞれ上場した。2011年6月に、メッセージアプリ「LINE」を公開してから約5年での上場となった。初値は公開価格である3300円を大きく上回る4900円となり、時価総額は1兆円を超えた。
同社は2014年、2015年と上場を計画していたが実現には至っておらず、まさに“3度目の正直”での上場となった。
このタイミングでの上場について出澤氏は、「市場の環境よりも大事なのは内部の状況。正直にいって、2~3年前は我々自身もどういった成長ができるのか確信を持っていなかった。5年間の経験と失敗を経て、フォーカスする戦略、将来の売上の成長に対する自信、それを運営する組織体制、この3つがしっかり固まったのが今だと思っている。我々にとってはベストのタイミング」と説明した。
上場の目的について出澤氏が挙げたのが、(1)透明性・信頼性の向上、(2)投資の大きく2つだ。同氏は、月間アクティブユーザー数(MAU)が2億人を超えるLINEは、日本をはじめとする各国で、電話やメールに代わる“コミュニケーションのインフラ”となりつつあると説明し、「より透明性を高めて信頼性を得ることが成長にとって重要だ」と語る。
また、投資先については、3つ大きくあると語る。具体的には、(1)インドネシアなどトップシェアではない国でのユーザー獲得への投資、(2)LINEがあらゆるサービスやビジネスの入り口になるスマートポータル戦略のパートナー開拓に向けた投資、(3)AIやボット、データ分析など開発や技術への投資であるとした。
当初は全世界をターゲットにしていたLINEだが、スマートフォンの普及により、すでにFacebookメッセンジャーやWhatsApp、WeChatなど、各社のサービスがシェアを獲得してしまっている。まさに出澤氏が話すように“陣取り合戦”は終息したと言える状況であることから、今後は高いシェアを誇っている、日本、台湾、タイ、インドネシアの主要4カ国にフォーカスして、収益を上げていく戦略をとるという。
2016年1-3月期に発表されたLINEの月間アクティブユーザー数(MAU)は、グローバルで約2億1840万人。そのうち、日本、タイ、台湾、インドネシアの主要4カ国を合わせたMAUは約1億5160万人にのぼる。この4カ国のユーザーの伸び率は前年比23%と高く、今後は合わせて約5億人いる4カ国の人口のうち8割近いシェアを獲得したいとしている。
では、なぜアジアにフォーカスするのにも関わらず、米国でも上場したのだろうか。その疑問について出澤氏は、今後も世界中の企業とパートナーシップを結ぶためには、米国に上場して同社のプレゼンスを上げる必要があると説明。また、「規模は違うがFacebookやGoogleなど、世界のインターネットジャイアントと同じ競争環境で戦うことは非常に重要」だと語った。一部では親会社である韓国NAVERの高い株保有率を維持するためではないかとも噂されていたが、これについては「それはまったくない」と否定した。
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