シャープは5月12日、代表取締役社長の高橋興三氏が退任することを発表。次期社長には、鴻海科技集団副総裁の戴正呉氏が就任する。
6月下旬の定期株主総会で承認後、6月30日までを目標としている鴻海精密工業による出資完了を機に高橋氏は退任することになる。退任後はシャープには残らないという。
本社を大阪府堺市にある堺事業所へ移転するほか、東京港区の東京オフィスの一部を千葉県千葉市の幕張ビルへ移転。鴻海拠点の活用による海外拠点の集約を図る。グローバルでの人員を適正化することも発表した。
5月12日の2015年度連結業績会見で高橋氏は「鴻海による出資完了後には、戴社長以下9人の取締役が新たなシャープの経営を担う。鴻海との契約では、払い込み完了後に役員は鴻海からは6人の推薦枠、シャープからは3人の推薦枠が決定していた。その中で今、役位が決定しているのは戴氏だけである」と解説した。
「戴氏は力を持っている人物であり、鴻海のナンバー2として重要な役職にいる。日本語も話すことができる。総合的観点から鴻海が選んだものであり、われわれも同意した。鴻海から66%という大きな出資をしてもらうわけであり、社長の地位は、鴻海からの指名にするべきというのが普通である。鴻海精密工業の郭台銘会長とは、契約締結後、相当会っている。ただ、契約内容の見直しなどについての話し合いは行っていない」(高橋氏)
同氏はまた、これまでの経営を振り返り、「日本の社会にインパクトがあったことも認識している。資本、資金が厳しい状況で打つ手が限られていたが、最もひどい影響を及ぼさないことを選択して、手を打ってきた。最終的な判断として自主再建は難しいと考えた。この3年は、必死にあがいた3年間であり、攻防に必死であり、のたうちまわっていた。日々正しい判断をして、それを後から後悔するのが経営者だといわれるが、その通りである」と語った。
「1年目は黒字だったが、2年目、3年目は赤字。社長をやってみてわかったが、成功し続けないといけない。一度失敗したら、その成功はすべて飛んでしまう。今は何が原因であったのかということを冷静になって振り返っている時期ではない。最終的にクローズ(出資完了)するまで力を入れていく。大切なのは、シャープがどうやって生き残るのかという点。2期連続の赤字に対しては経営責任があるが、鴻海の出資を得て、新たなステージに持って行くために退任前にしっかりと道筋をつけたい。これが私の責任であり、最大の役割である」(高橋氏)
シャープは、提携効果の最大化、早期黒字化に向けた3つの構造改革として、本社移転などを盛り込んだ「提携をにらんだ経営資源の最適化」、コンシューマーエレクトロニクスカンパニーをAV、通信、クラウド、健康・環境事業に再編することなどを含めた「再生を加速する責任ある事業推進体制」、出資後に管理職5%、一般社員2%の給与削減の早期廃止、黒字化による賞与回復、社員に対するストックオプション制度の導入、管理職降格制度の導入などの「成果に報いる人事制度の確立」を掲げる。
高橋氏は「この3年間に渡り、いろいろな改革をしてきたが、今回発表した人事制度の変革は、1年以上前からやってきたものに沿っている。ストックオプションも1年以上前から検討していた。ストップクオプション制度は成果に報いるための報酬制度であり、役割等級制度の一般社員への導入も図る」と背景を説明した。
続けて同氏は「改革は人の部分が多かった。2度に渡る希望退職で3000人の仲間がいなくなり、それ以外にも退職する人がいた。株主などのステイクホルダーは納得がいかないところもあるかもしれないが、早く給与や賞与を戻したい。これは短期的な判断ではなく、中長期的には優秀な人材をリテンションし続けることができ、シャープの再生にも大きな意味を持っていることになる。改革は、自分自身で最後までやりきれないところはあるが、新たな執行部でやってもらいたい」と思いを語った。
「鴻海はすごい情報システムを持ち、すごいスピードで事業と経営の情報を掴んでいる。これは想像以上であった。今までのシャープのスピードとは桁が違う。これは、シャープの財務、経理部門が最も強く感じていることだろう」(高橋氏)
シャープが発表した2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績は、売上高が前年度比11.7%減の2兆4615億円、営業利益は前年度の480億円の赤字から悪化し、1619億円の赤字。経常利益は前年度の965億円の赤字から悪化し、1924億円の赤字。当期純利益は前年度の2223億円の赤字から2559億円の赤字になった。
「2期連続の赤字を計上することになったことは申し訳ない。鴻海との戦略的提携で財務基盤の強化を図り、事業の安定的な継続に努める。鴻海との戦略提携で両社の強みを融合することで幅広いシナジーを創出し、競争力のある製品やサービスを生み出して、新たなIoTの世界を開いていく」(高橋氏)
セグメント別業績は、コンシューマーエレクトロニクスの売上高が前年比17.5%減の8170億円、営業損失は418億円減の218億円の赤字。高橋氏は「国内4Kテレビに加えて11月に発売した“ヘルシオホットクック”などの“ヘルシオ”シリーズの販売が好調に推移したものの、欧米のテレビ事業がブランドライセンスビジネスに移行したこと、中国で液晶テレビや白物家電の販売が不振だった。体質改善のため、液晶テレビの販売対策費用を計上したことが赤字となった」と説明した。
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