スマートフォンを中心に、オムニチャネルやIoTなど次世代テクノロジを通じて生み出されるデジタルマーケティング戦略。そこにはアイデアやクリエイティビティが不可欠だが、それだけでは「これまでになかった体験」を提供することはできない。ユーザーに新たなエクスペリエンスを届けるために、欠かせない普遍性や本質とは何か。
この連載では、デジタルを活用したコミュニケーション施策を発信する「コードアワード」に寄せられた作品から、デジタルマーケティングの「未来」を拓く“ヒント”をお届けする。
今回は、カケザンのクリエーティブプランナー・新野文健氏による受賞作品インタビュー。第1回のゲストは「コードアワード2015」のグランプリ作品「ヤフー トレンドコースター」を手掛けた「dot by dot inc.」から、CEOの富永勇亮氏、CTOのSaqoosha氏、CCOの谷口恭介氏、デザイナーの伊藤太一氏に、ヤフートレンドコースターのテクノロジから最近の取り組みについて聞いた。
--まずは、受賞作の「ヤフー トレンドコースター」の技術的な仕組みについて教えてください。
富永氏:データを「体感」してしまおうと思ったのがきっかけです。Yahoo!のリアルタイム検索は、Twitterに投稿されて話題になったキーワードを24時間、7日間、30日間と遡ってグラフで見ることができます。これは日本中の話題が詰まった波形グラフであり、トレンドが詰まっています。
この急激に上がったり、下がったりする波形グラフは、ジェットコースターのコースに似ているんじゃないかと考え、「トレンドの波」に乗る体験をするために波形グラフをジェットコースターのコースに変え、360度見渡せるコースをビジュアライズしました。
--ここには、Unityを使っているのでしょうか。
富永氏:Unityでデータを可視化できるようにして、「Motion-sim(モーションシム)」というマシンを使うことで「データの波」を体験できるようになります。
Saqoosha氏:Motion-simはドライビングシミュレーターなので、本来は画面やハンドルがついています。しかし、今回はそれらはまったく必要なかったのですべて外して、台座の部分だけを使いました。動作をコントロールしている仕組みは備えつけのものがあったので、Unityで作ったジェットコースターの速度や加速度を計算してデータを送り、ジェットコースターと同じような動きを再現しています。
富永氏:実はこのドライビングシミュレーターはチェコ製で、家庭用のゲーム機として作られているのですが、電圧が230V必要なんです。日本では、工業用の電源でも200Vまでしか出ないので、電圧を調整する機材をさらに追加する必要がありました。
スピードを表現するファンも元々ついているのですが、風圧が弱かったので強力なファンを台座の中に仕込みました。仕込んだファンは、本来マンホールの中で作業している人に空気を送るようなとても強力な工業用送風機を使っています。それくらい強いものでないと、リアルなスピード感を出すことができなかったんです。
しかも、これはオンとオフしかなかったのでパワーコントローラーも別注しました。ジェットコースターが上がっているときに風は吹かず、下がり始めると吹く、スピードが上がってくると強くなる。角度や加速度を計算して風の強弱をつけました。さらにジェットコースターの最後では、バラエティ番組などでよく使われる炭酸ガスをスプラッシュとして加えました。
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