5年後、10年後といった近い未来、ロボットの世界はどうなっているのか。
吉田氏は「一家に1台ロボットがいるという世界が、かなり早いタイミングでくると考えている。2020年の東京オリンピックはひとつのターゲットとなっているが、そこから5年、10年するとSTAR WARSのような世界になるのでは」と予想する。
景井氏もロボットは増えると考えているが、その形は役割に応じて異なると見ている。「人型ではないロボットが世の中にあふれていると思う。自動販売機でも音声会話でやりとりするといった“ロボット的”なものがどんどん増えていくのでは。一方、ユーザーと心と心で会話するようなコミュニケーションでは人型ロボットが活躍すると考える。10年後は1人1台ロボットを持ち歩いている未来を信じている」(景井氏)。
また徳丸氏も「ロボットをうまく活用してバラ色の未来を築けると思う」と展望を語った。
この一方で、ロボットを脅威と感じる人もいるだろう。モデレーターの岡本氏は、「ロボットがハッキングされて危害を加えられるのではないか、職が奪われることになるのでは、といった不安の声も聞かれる。ロボットの脅威というより、人工知能(AI)によるところだと思うが、AIを搭載しているPepperについてはどう考えるか」と、吉田氏に疑問を投げかけた。
これに対して、吉田氏は「データでは、日本人の仕事の半分くらいは、AIやロボットでできるのではないかと言われている。単純な仕事は、早い段階でロボットやAIに置き換えられていく。そういう(仕事に就いている)方々からすれば脅威かもしれない」と話す。
同社では、ロボットだけで接客をする「Pepperだらけの携帯ショップ」(東京都港区南青山5-1-25)を、3月28日~4月3日に実験的に開店する予定があるという。「それを見て、もう人間はいらないのかと不安に感じる人もいるかもしれない。しかし、これは脅威というよりも大きな変化で、テクノロジのイノベーションが起きるときには必ずあること。変化が起こることは100%確実だと分かっているので、大きなチャンスと捉えて、新たなビジネスを創造していけばよい」(吉田氏)。
さらにモデレーターの岡本氏は、「海外、特に米国では侵略などの危害を加えられるイメージがある」と尋ねた。これについて吉田氏は、「ロボットは空想の産物的なところに期待値がある。米国はターミネーターや軍事用といったイメージだが、日本はヒューマノイド。欧州では職を奪われると考えられている。この変化に対する脅威は国によって違う」と説明する。
徳丸氏は、すべてのロボットがネットワークにつながり、カメラが付くようになると、セキュリティの観点でも脅威になる可能性はあると話す。「確かに米国では危害を加えるイメージかもしれない。しかし、ロボットは人のためにあるべきという『ロボット三原則』をベースに考えていくべき。確かにルンバも清掃員の職を奪っているのかもしれないが、清掃も兼務している事務員の作業を楽にしているケースもある」(徳丸氏)。
景井氏は「危害を受けると感じるのは外観に関するところが大きいのでは。米国のロボットはゴツゴツしている。日本はアニメも含めてお友だちという印象が強い。このイメージを海外に持っていき、ロボットは脅威ではないとアピールする必要があるのでは」と語った。
それを受けて徳丸氏は、「確かに、文化的背景の違いはある。ロボット掃除機はおもちゃだと思われて販売が伸びなかった時期がある。一方、人型ロボットは日本に受け入れられる土壌がある」と話した。
さらに吉田氏は、「これからセキュリティ面などで悪いことをするロボットが出てくることも考えられる。しかし、悪いものは無くなり、良いものだけが残っていくという淘汰が今までもあった。良い技術を世に出して生き残ることが使命だと考えている」とした。
最後にモデレーターの岡本氏は、「ロボットへの正しい接し方やルールを守って作っていくことが大切。ロボットが向いている仕事はロボットに任せ、人間はクリエイティブな仕事に時間や知恵を使っていくという形で共存できる」とコメントし、この見解にパネリストたちも同意。最後にそれぞれのロボットへの思いを語り、セッションを締めくくった。
「今はロボット革命の最初の数年だ。これからなので、ロボットの時代を一緒に作っていきたい」(吉田氏)。「ロボットはまだ生活に異質な存在であり、溶け込むには時間が掛かる。これから顧客と一緒に世界を作っていきたい」(景井氏)。「人型ではないロボットの方が数は多い。ロボット=(イコール)人型ではない。これからロボット開発を目指す人には、人型でないロボットの方がビジネスチャンスも大きいかもしれないことを念頭に置いてほしい」(徳丸氏)。
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