ASEAN諸国の中でもひと際「親日」と言われ、一昔前は「日本で流行ったファッションが2年遅れで流行する」とも言われていたタイ。同国の流行は周辺諸国のファッション好き、業界関係者にも一目置かれているが、ファッションECも少しずつ浸透し始めている。
そんな同国のファッションEC市場の中で頭角を現しているのが、2011年にサービスを開始した「WearYouWant」だ。その将来性を買われて2014年には日系のベンチャーキャピタルを含む3社から、そして2015年9月には「ZOZO TOWN」を運営する日本のスタートトゥデイから出資を受けた。
同社のCo-Founder 兼 Managing DirectorであるJulien Chalté氏とMartin Toft Sørensen氏に、WearYouWantの戦略やタイにおけるEC事情について聞いた。
2011年にサービスを開始して現在4年目です。当初の2年間は特にマーケティングに注力し、時間を費やしていました。当時タイのEC市場はまだ小さく、あまりにもフロンティアな状況では活動しにくいため、本格始動するまで少し市場の成長を見守っていました。
戦略としては、在庫を持たない、倉庫を持たない、品質の高いものを間違いなく届けることに注力しました。在庫を持たないことで管理が不要となり、財務圧縮ができます。倉庫を持たないことで建設費や借地代、および倉庫をマネジメントするための人件費、労務者管理などが不要になります。注文が入ったらメッセンジャーが販売主のところへ行って品物を預かり、購入者へ届けています。
現在の会員数は約10万人です。65%が女性で、男女ともにボリュームゾーンとなっている年齢層は25~35歳。スマートフォンを始めデジタルデバイスを使いこなし、海外の最新ファッションやビューティー事情に感度が高い人たちが多いです。
もっとも人気があるのは美容商品です。世界中の有名ブランドの商品を店頭よりも廉価で購入できる上、自宅まで配送するので「忙しくて実店舗へ行く時間がない。でも、美容は大事」と考える女性に支持されているようです。次はシューズ。男女の区別なくタイ人に人気のある「オニツカタイガー」を始め、「コンバース」など著名ブランドも取り扱っています。それに続くのが、アクセサリーやバッグですね。
ユーザー数や売上は双方とも毎年100~200%ほどの伸びを見せています。特に2015年は最高の伸び率となりました。5年ほど前に比べ中間層が育ってきたことや、モバイルデバイスが普及したことなどが、この伸びの背景にあります。
現在は500店舗ほどですが、店舗数よりも販売する商品の品質を維持することに注力しています。店舗数が少なくても良いものを販売していきたいと思っており、「アディダス」など世界中で知られているトップブランドにも利用してもらっています。全体の20%の店舗が当社サイトの売り上げの80%を生み出すという「80:20の法則」はここでも顕著です。
収入源は2種類あります。1つは販売における仲介手数料で20~30%。サイトで取扱う商品のボリュームなどで比率を変えています。もう1つはBtoBサイドの商品掲載料。こちらは1ブランドにつき、年会費は一律1万5000THB(約4万5000円)としています。
競合はクオリティの高い国内の総合系ECサイトや、当社と同業のファッション系、美容系。特に、デジタルデバイスを中心に扱うサイト、中古商品を含むファッションと美容商品を個人間で売り買いするサイトなどをマークしています。他国での流行をいち早く取り入れ、また価格優位性を出すことで差別化を図っています。
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