東南アジアで奮闘する日本人起業家たち--タイのスタートアップイベント「Echelon」を現地取材

 11月26~27日に、タイの首都バンコクで「Echelon Bangkok 2015」が開催された。そこには東南アジアのスタートアップシーンを盛り上げる起業家たちが多く集まった。

 筆者は現地に渡り、同イベントに登壇・出展した日本人プレイヤーにフォーカスして取材した。FintechやIoT、人材など多岐にわたる分野で活躍する彼らに最新の動向について話を聞いた。

活況迎える東南アジアのFintech市場で奮闘


Omiseの 長谷川潤氏(中央左)は「Driving Financial Innovation in SEA」のトークセッションに登壇

 Fintechをテーマにしたセッション「Driving Financial Innovation in SEA」で議論しあう東南アジア各国の起業家たちの中に唯一、日本人スピーカーとして参加する起業家の姿があった。バンコクを拠点にオンライン決済のAPIを提供する「Omise」の共同代表である長谷川潤氏だ。

 同氏は2013年にバンコクでOmiseを立ち上げた。当初はEコマース事業に取り組んでいたが、ビジネスプランを練るなかでボトルネックとなっているのは決済システムであることに気づき、現在のビジネスモデルにピボット(転換)。2014年12月にサービスを開始した。

 強固なセキュリティとシンプルなAPIを強みに、加盟店数を2700店まで拡大し成長。2015年5月に、複数のベンチャーキャピタルから260万ドル(約3.2億円)の資金を調達し、アジア全域にサービスを展開しようとしている。地場の企業も含めて、タイのFintech市場の中で最も勢いのあるスタートアップの1つだ。

 長谷川氏は、タイを含む東南アジアの新興国におけるスタートアップのレベルは高く、先進国に出遅れていることはないと話す。問題があるのはむしろ、タイに接続する外部のインフラストラクチャーであると分析している。金融業界の動きを例にすると、日本では大手銀行とスタートアップが提携する動きが活発化しているが、タイではこういった動きはまだ始まったばかりだ。


最高経営責任者の長谷川潤氏(右)と最高情報責任者のFrederico氏(左)

 トークセッション後の取材で長谷川氏は、東南アジアにおけるFintech市場の成長の背景にあるEコマース市場の活況についてこう述べた。

 「2014年の東南アジアのEコマース市場規模は1480億ドル(約15兆円)。タイは2013年時点でわずか9億ドル(約900億円)だが、それが今後4年間で150億ドル(1兆5000億円)になると言われている。Omiseはバンコクを拠点に2014年12月から事業を展開をしているが、現在の伸び率で順調に推移すれば、今後1年以内にはタイだけでも決済取引額は1000億円程度に到達する予定」(長谷川氏)

 また、タイにおけるEコマースユーザーの動向については、「少し前まではタイでは銀行振込の方が主流だったが、銀行側がモバイルバンキングの宣伝に力を入れ始めていることもあり、消費者のオンライン決済に関するリテラシーが大変向上していると感じている」(同)とのこと。

 同社は現在、タイのメガバンクと共同でCtoCのEコマース市場向けのプロジェクトを水面下で進めている。2016年には決済取引額で1000億円規模を目標にしている。また、タイ以外にも2016年1月には日本とインドネシアで同時にサービスインをする予定。続いてマレーシア、フィリピン、シンガポールにもサービスを拡大していく。長谷川氏は、アジアを拠点にする企業にとってのペイメント分野でのワンストップサービスを目指す。

 タイのスタートアップエコシステムについても、国内市場の盛り上がりに目をつけた投資家の増加にともない、徐々に形成されつつあるとコメント。今後はますますタイ発の質の高いウェブサービスを目にすることが増えるかもしれない。

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