携帯料金の引下げ議論が決着--タスクフォースを振り返る - (page 4)

結論は当初の議題にほぼ沿った形に、議論が時間不足な感も

 非公開の1回を含む5回の議論を踏まえ、最終的には「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」がまとめられた。その中で具体的な施策として触れられているのは、おおむね第1回のタスクフォースで提示されたテーマに沿った内容であったといえる。

 1つ目は、スマートフォンのライトユーザーや、端末購入補助を受けない長期契約者などの多様なニーズに対する料金プランを導入し、料金負担軽減を図る「スマートフォンの料金負担の軽減」だ。

 12月16日に実施された第5回のタスクフォースで提示された資料では、「対象年齢や機種を限定して提供されている5000円以下のライトユーザー向けプランの価格帯も参考に、年齢や機種を限定せずライトユーザーも利用しやすいスマートフォンの料金プランの提供を検討すべき」と触れられていることから、それを基準として1Gバイト、もしくはそれ以下の通信容量で、5000円程度のプランが提供の目安になると見られている。

  2つ目は「端末販売の適正化等」。今回の議論の中心となっていた端末の値引き販売について、店頭で利用者に仕組みの理解を促すための措置を講じるとともに、割引額が「端末の価格に相当するような行き過ぎた額とならないよう、適正化に向け取り組むこと」とされている。またキャリアに対して、取り組み状況を定期的に報告したり、販売代理店に対して指導・監督をしたりするなどの対応も求めている。

 “行き過ぎた額”の具体的な額に関しては明記されていないが、取り組み方針の文脈や、第5回タスクフォースの配布資料で「スマートフォンを『実質0円』にするような高額な端末補助は著しく不公平であり」と触れられていることから、実質0円、あるいはそれを超えたキャッシュバックなどによる割引を自粛するよう促すものと考えられる。

 もっともこの点に関しては、「0円端末がなくなり端末価格が高騰することを想定しているわけではない。法をくぐるような著しい高額補助(高額キャッシュバックを指していると見られる)を是正しましょうということ」(北氏)という声が構成員から出ている。2007年のモバイルビジネス研究会の議論を受け、販売方法が大きく変化したことで、端末の売上が著しく減少した反省もあり、総務省としてはソフトランディングによる長期的な解決を目指したいものと推測される。

 そしてもう1つは、「MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進」である。これに関しては、いくつかのMVNOがキャリアに求めている加入者管理機能(HLR/HSS)をMVNOが保有できるようにするよう、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」で「開放を促進すべき機能」に位置付けるとともに、キャリアとMVNO間の協議促進を図るとしている。

 これは従来より取り組みが進められているものだが、キャリアが安価な料金プランを提供すると、安さを武器に成長しているMVNOにそのしわ寄せがいく可能性があることから、MVNOの多様化を進めるべくHLR/HSSの開放に向けた動きを加速させたい狙いがあると見られる。

 総じて今回の議論を振り返ると、キャリアに安価な料金プランを急速に求める一方で、MVNOが求めるHLR/HSSの解決には明確な道筋が立てられていないなど矛盾を感じる部分がある。また、値引き販売の問題に関しても、“時間切れ”で議論が十分に進められていない印象を受けるなど、注目を集めた割にはやや中途半端な結論に終わってしまった印象を受ける。

 料金引き下げの話自体、唐突に起きたものだけにやむを得ない部分もあるが、キャリアの実効性が未知数な一方で、業界全体に与える影響は非常に大きいものとなる。それだけに、端末メーカーや販売代理店など、より幅広いプレーヤーを議論に巻き込み、時間をかけて結論を出す必要があったのではないだろうか。

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