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電子書籍ビジネスの真相

「緊デジ」問題を読み解く11の疑問(前編)--“100万点電子化”という妄想 - (page 2)

林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)2015年10月13日 08時30分
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疑問1)結局、この事業で新規に電子化した本は何冊なのか?

 [データ:東京新聞(2013年6月28日)より。グラフ中の数字は概数]
[データ:東京新聞(2013年6月28日)より。グラフ中の数字は概数]

 本事業は、「緊急デジタル化事業」と銘打たれています。この言葉を聞いて、すでに電子書籍として一般に売られているものが対象になると考えた人は、ほとんどいないでしょう。

 前回触れたように、実施主体であるJPOの専務理事で事務局長の永井祥一氏は、「すでに電子化されている本は、事業の対象とならない」と明言していました。ところがフタを開けてみたら、全体の3割が、このような「電子書籍の電子化」本だったのです。

 いつ、誰が、どんな理由で、電子書籍の電子化を決断したのか。その際、内部で異論はなかったのか。申請数が足りないのであれば、そこで打ち切って、余った補助金は国庫に返すなどの手が打てなかったのか。いくつも疑問が浮かびます。

 その決断をした人も、数億円のお金を自分の懐から出すのであれば、もっと慎重に判断したことでしょう。公的プロジェクトにありがちな「他人のお金だから」という意識が、甘えが、そこにはなかったでしょうか?

 他人のお金、しかもそれは、復興特別税などの形で、震災被災者のために、特別に用意されたお金なのです……。

疑問2)中小出版社支援になったのか?

 そもそも、大手出版社であれば、自社の費用負担で電子書籍化を進めていけたはずです。逆にいえば、この事業は、自社で電子化ができない、中小出版社を重視した事業だったはず。

 ところが、実際には、中小出版社からの申請は低調で、東京新聞の前掲記事によれば、全体の半分以上は、大手出版社5社の書籍が占めたとのことです。

[データ:東京新聞(2013年6月28日)より]
[データ:東京新聞(2013年6月28日)より]

 さらにいうと、申請受付のハードルが高すぎたために、ほかならぬ東北地域の出版社が、一部、門前払いになったとのこと。

 そうした出版社から見れば、「東京の、東京による東京の業者のための」事業としか見えないのは当然です。震災被災地域の復興というのは名目に過ぎず、被災者は、公金を引き出すための「ダシ」に使われたのではないか、という疑念が拭えません。

疑問3)東北に関連した本を、どれだけ電子化したのか?

[データ:河北新報(2014年6月20日)より]
[データ:河北新報(2014年6月20日)より]

 たとえ、電子化した本に問題があっても、東北の出版社が参加できなくても、東北に関する本がたくさん電子化されているのであれば、「復興事業」としての名分は立ったかもしれません。

 しかし、結果から見れば、東北に関連する本は、ごくごく一部にとどまりました。

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