こんにちは、林です。一部では、かの「ウォーターゲート事件」になぞらえて、「緊デジゲート」とも呼ばれている、電子書籍の国家プロジェクトに関するスキャンダル。そこに、会計検査院のメスが入ったようです。
“電子書籍の市場を広げて東北の情報発信などにつなげようと国の復興予算を使って電子化された本が、少なくとも1600冊以上、著作権の調整がつかないなどの理由で配信できていないことが会計検査院の調べで分かりました。(中略)配信されていない本に使われた補助金は5600万円に上り、会計検査院は配信を進めるよう求めました。この事業では、電子化された本のうち東北関連は全体の3%にとどまったほか、復興事業にふさわしくないわいせつな内容だったとして20冊分の補助金が返還されています。”
「緊デジ」とは何か? 2012~2013年にかけて、国からの10億円、出版界からの10億円(ともに概数)を費やして、6万冊の電子書籍を制作した「経産省コンテンツ緊急電子化事業」のことです。NHKの報道にあるように、国からの10億円は、東日本大震災の復興予算から拠出されました。
事業目的として、次の4項目が掲げられていました。
「復興」と「電子書籍」、「我が国全体の経済回復」というお題目を目にしただけで、疑問が次々と浮かびます。
「電子書籍が震災復興に本当に役立つのだろうか?」「図書館ですら復興途上なのに、電子書籍を作ることが『知のアクセス向上』に役立つとは? 被災地で電子書籍を読みたいというニーズがあるのか」「まだ市場の小さい電子書籍で、雇用創出などできるのか」など……。
何しろ、大震災の翌年ですよ? 関連死も含めると2万弱の方が亡くなり、20万人を超える方が避難している中、「電子書籍による知のアクセス向上」が、復興予算の最優先の使いみちであるとは、よほどユニークな想像力の持ち主でなければ、思いつけなかったでしょう。筆者自身は、電子書籍の振興自体にはもちろん賛成ですが、それは制度の整備や税の優遇などで行うべきで、復興予算、つまり税金を使って、震災の翌年にやるべき事業とは思えませんでした。
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